一二三四五六七八九十一二三四五六七八九十一二三四五六七八九十一二三四五六七八九十一二三四五六七八九十一二三四五六七八九十一二三四五六七八九十一二三四五六七八九十


 第三章 ファーナス・ジリオンフェザー&ナイトメア・ミラーズ

「……ぁ゛……ぅ……っ」
 鏡の群れに視界を塞がれたと思ったのも刹那、何処とも知れぬ場所に放り出され、ゴツン! と固い床に額を押し付けられたランセリィは瞳に涙を滲ませた。
「お前のターンはもう終わり! 次は私のテリトリーで勝負をしましょうねぇ?!」
 背中に乗ってきたヴュゾフィアンカが、土下座に似た格好を強いられた少女の首を、ヌルリと青い血に濡れた手で掴んできている。
「は、放せっ! くっ……そんなに真っ先に倒されたいか……っ!」
 肘打ちをやんわりと掌で押えられ、逆に手首を掴んで捻られた。蹴り上がろうとした踵よりも早く膝の裏を押され、ストッキングの重しをされてしまう。突き上がった小さなお尻を濃い青紫のオーケープマントロラで包みつつ、衣裳を激戦の名残で染めた淑女が耳元で嗤った。
「アッハ、その通りよっ。私を倒さずして何処かに行けるつもりだったのかしらーぁ!? ボーナスタイム。FUCKでよがり狂う本性をもっとたっぷりと暴いてあげるわねーぇ!!」
 斬糸によって所々が切られた蝙蝠翼が暴れ、菖蒲色のブラウスの左胸の黒々とした血痕を叩いたが、悲しいほどに無力なそれは傷口を開かせることすら出来はしない。
(こいつに構って足留め喰らってられない。早く、あそこに戻らなきゃ……っ!!)
 昏く淀んだ空間だった。視力そのものを封じられたかのように茫洋としていて、確固たる物の形を得られない。辺りは薄暗く足元の床は鏡面じみたつるりとした材質で、立ち籠めた不快な色の靄が靴を浸している。周囲には彼女の身長程もある長方形の鏡が無数に墓標の如く林立し、時たまそれが合わせ鏡になって終端の無い像が横に並んでいた。
「そうねぇ、大事なシェリスに隠れて、こそこそ私とじゃれてる場合じゃないかもねーぇ?! だけどご免なさい、この手の邪魔が私は大好きなの!!」
 獲物の胸中の焦りを悟る嗅覚だけが異常に発達しているゾフィアが満面の笑みを浮かべて頬をつんつん鼻で突いてくる。心を読まれてムカッときたランセリィは表情を裏側とは正反対の友好的なスマイルで鎧うと、切れ長の蒼瞳を意地悪く流し目にして後方に送った。
「……ふん、別にいいや、ゾフィアと一緒にいるの好きだし。だけど、へーぇ、こんな所がわたし用の地獄なんだ。創った奴の安い死生観が出てて、なんだか可哀想。首の手、放してくれたらなでなでしてあげるよ?」
「剣で? 心配しなくてもすぐに怖くしてあげるわ。遊園地のハーメルン・ランド幽霊屋敷もスプーキー・ハウス泣いて逃げ出すくらいにねぇ?」
 ズズズと下から迫り上がり、正面に聳えてくる夜の湖水を思わせる玲瓏とした逆様の世界への扉。その冷気漂う鏡面に映る少女の姿は無惨の一言に尽きた。輝かしかった精緻な衣裳は慈悲無く隈無く周到に鋼線で裂かれ、生地に幾重にも巻いた笹の葉切れ目から、守るべき柔らかい肌と乾いて粗雑なクレヨンの如くなった血糊を晒している。痛めた尻尾は弱弱しく垂れ、指は鉛のように重く、前方に投げ出させられた左手の握り拳を開いてしまいそうになる。脚にも金属の芯を通したような疲労の重量感が伝播し、引き摺るのすら億劫だ。
 それでも、その藍理石ソーダライトに滾る凶光は衰えることがない。伏せさせられた顔の横に突いた右腕は無銘の錦銀の柄を硬く掴み、不利な姿勢から反撃の機会を抜け目なく伺っている。
「あら、可哀想。苺タルトみたいな美味しそうな傷ねぇ?」いきなり首筋の傷を舐められたランセは「ひゃっ」と呻いた。鋼線で作られた皮膚の断面を生々しい紅い舌が這いずる。
「色々あったけど私の勝ち……。さぁ、何をして遊ぼうかしら可愛らしいお人形さん?」
「こ……の……負ける、か……ぁっ!」
 悍ましさに耐え、精神統一。己の影の更に奥へと思念を送り、全滅から漸く増殖してきた巣食う者共へ活性化を促す。周囲に円形に広がる暗黒の深淵から蠢く怪奇を解放――、
「これ、なーんだ?」
 少女の努力を茶化すようにアイシャドーを瞬かせてゾフィアが指の腹に挟んで見せてきたのは数本の釘だった。ブラックオパール的な極彩の遊色効果の輝きを放ち、漆塗りの如き透質感がある事を除けば、太さと長さだけなら何処にでもあるようなごく普通の。
 光を憎む色に染まって激しく波打ち、今にも内部から突き破られんとしていた目前の大海に、それを刺される。すると何とした事か、釘の先端と黒い侵蝕が融け合って癒着したかと思うと、獰猛な喧騒が俄に凪ぎ、色が変じただけの元の鏡面に戻ってしまったではないか。影封じのネイル。正式な名称は知らないが、ランセは直感的にそれの効力を悟った。
(……なんだろう……それだけじゃない……っ、凄く嫌な感じがする……っ!!)
 人差し指程度の小さな封具が更に大量に取り出され、裏を見せる革靴の先端にゆっくりと刺し込まれて来た。肉体を貫通される激痛を覚悟して身を縮こまらせたランセリィだが、あに図らんや何時まで経っても痛みは無い。代わりに、X字を並べるように交差させて打ち込まれた釘が刺股となって働いて、X字の下端の隙間で足の指が拘束されてしまった事を悟った。立ち上がろうとして、たったそれだけの動作が既に封じられている。指を動かせず、足の甲が地に接し、爪先から膝までを固定されたのと同様の効果を受けていた。
「如何? たったこれだけでぐっと身体の自由度が減るのよねーぇ?」
 一仕事終えた菫の淑女が、芳しい少女の蒼い死香化粧の薫るうなじから手を離す。
「……あんまり……舐めないでよね♪」
 その油断に間髪を入れず白夜の魔性は付け込んだ。上体を捻って素早く振り向いて、それ単体で相手の喉笛を食い千切れそうな殺意を露わにし、才走った蒼瞳に力を籠めた瞬間、
 ――ゴォォォォォオオオ……ゥゥゥウヴウゥゥゥゥオオオオオ゛ォォォッッッ!!!
 白い焔が燃え上がる。夜の帳の如きドレスから月光が噴き出し、細い銀糸がはためいた。
「わたしはシェリスに一杯元気を貰ってるんだ。お前なんか一瞬で灰にしてやる! この程度で人の抵抗を封じた気になるなんて今までよっぽど弱い奴と戦ってきたんだねっ!!」
 さようなら、と八重歯が尖る。しかし、敵を焼き尽くすかに見えた炎は途中で軌道をねじ曲げられ、排水孔に吸い込まれるようにして影封じの釘の根元に消えていってしまった。
「っ、な……なんで……っ?!」
「あらあら、驚くことかしら! 呪術の極上の触媒を飲ませてくれたのはだーれ?!」
 そう言って鏡に映る銀髪鴉翼の凶鳥がペロリと舌を出し、二本指で摩って見せた。
「く!! 思い出させるなぁぁぁっ、あんなことっっ!!」
「影を掌握された月は変化すること能わず。それはすなわち停滞を打破できぬことを意味する。違うかしら? 呪術者の眼から見ると、お前は弱点だらけなの」
 余裕たっぷりに弄ばれる三日月のペンダント。ならば、と屁理屈じみた意味付けとは無関係そうな身体変化で肘に角を生やそうとし――。瞳の上端を水平に揃えて熱狂の睡魔に委ねた女に、結い上げたウルフテール銀髪を愉しげに揺らしつつ濃紺の頭飾ヘッドドレス布から抜いた羽根で身体のあちこちをチクッチクと刺されると、魔力の経脈を断たれて細胞の活性化が止められてしまった。
「手の内は沢山、見せて貰ったのよ? そう簡単には通用しないわねーぇ……」
「う、うそ……ちょっと待っ――!」
 躍動の残滓である甘酸っぱい汗を吸った鴉の濡れ羽ベリーショートが予想外の事態に狼狽し、凶女の微笑みを映すプレート状の鐐冠がカチューシャ輝きを焦燥でくすませた。享楽の吐息に撫でられた雄牛型の魔角バッファロー・ホーンが微弱な電流を流されたかのように震えて警戒心剥き出しに先端を研ぎ澄まさせる。
「お前が理不尽なら、私はそれを包み込む現の霧。私が絶望なら、お前はなぁに? 可哀想な女の子……!」
 呪いの言霊を唄いながらゾフィアがランセから長剣を奪い取り、収監された両爪先の間に突き刺した。く少女の尻尾を掴んで引っ張り上げると、それで両手首を蔓草の意匠が輪を作る鍔にガード縛りつけてしまう。宵銀の鋼板は剣身と釘がちょうど一直線を描く位置に食い込み、蠢動を封じられた影に噛みつかれたまま抜けなくなる。膝立ちで両腕を後頭部に回させられた華奢な骨格の敗者は、これで本格的に身動きが取れなくなってしまった。
「う゛……にゅぬ゛……っ!」
 Cの体文字を描かされた少女が極度の切迫感に身を捩るのを見て、女が不気味に微笑む。
「自信に満ちたお前に傷をあげる。いつまでもジクジク疼くねぇ?」
 灰華のフリル重ねのスカートの中央、ミーティの細い凶器でざっくりと入れられたスリットから、妖艶な漆黒に彩られた三角地帯が覗いている。そこに差し入ってきたゾフィアの左腕の横暴な挙措を、顎を胸元にくっつけて下を向き不快に満ちた目で追っていたランセリィは、自分の立て膝の間、床の鏡面に映っている物を発見して思わず頬を赤らめた。
「鏡よ鏡よ鏡さぁん、私の悪戯を待ち侘びている青い果実はどぉこ?」
「に゛ぃっ、見るなぁぁっっ! さっきといい、何度も何度もぉぉぉっ!」
 囚われの少女を天地逆に捉えるスクリーンは写真を現像する暗室の灯りの如く内側からぼんやりと発光を始め、同時に魔性の影を追い散らして透明な硝子に墨を僅かに混ぜた程度に色を薄める。そうして次第に明瞭になっていく像に股間が露骨に描かれていたのだ。
 蛍光灯じみた仄かな熱に照らされて、少年的で爽やかな太腿と股座が身悶える。
 下穿きは黒豹毛並みの光沢を持つショーツだ。フロントは股下から大して面積が無く、臍の大分下で低い背丈を、閉じた包皮の上まで必死に延ばして少女の秘苑を覆い隠している。全体は腰から中央へ緩やかなブーメランを描いて落ち込んでいて、銀薔薇の刺繍を施されたサイドは、ティアラの如く左右の腸骨翼に引っ掛って肉の薄い可憐なウエストをぴっちりとゴム紐で締め付けていた。
 鏡写機が特に貪欲に視線を食い入らせるのは、アダルトな布の船底部。
「ふゃ……っ……ぁ、ぁぅぅ……こ、このぉ……っっ」
 視姦のむず痒い羞恥が脾腹を掻き毟り背筋を這い上がってくる。被写体の少女が僅かな可動部を駆使して腰を動かせば、注視せねば気づかないながらも肉質を早熟に造り変えられつつある陰阜の盛りとすべらかな臀部の丸みの間で、縦皺の寄った天鵞絨の如き生地が哀れな蓑踊りを繰り広げた。
「恥ずかしい娘。母親の角を折った仇に喜んでこんなサービスするなんて? でも、それでいいの。無力な女の子はそうやって強い敵に媚びて生きていくのがお似合いよぉ……」
「〜〜〜〜ッ! だ、ったら、媚びてるっ分の、ご褒美が欲しいな……っ、んぅっ……ん! 早くこの尻尾解きなよっ、この性犯罪者ぁ!」
 チリチリと鼠蹊部に淫靡の炎が当てられる。ますます腰振りが激しくなり、鏡張りの舞スケートリンク台でオーバーニーソの膝がキュッキュッと擦れた。ホイップクリームをうっすら塗ったような甘い香りのする首筋や珈琲色の硬い胴アウター・コルセット鎧から懲りずに燃え上がった月の焔はしかし、見立ての呪縛に囚われる。冷凍室から漏れ出す氷温の靄の如く黒衣を降って釘孔に吸い込まれて奮励諸共に無に帰してしまい、ただただズシリとした疲労を蓄積させていくのみだった。船乗りの熟練技じみた複雑怪奇な固結びを緩めようともぞもぞ動く尻尾はにっちもさっちも行かない。
「やぁだ、メインディッシュを繋いだばっかりでそれは酷いわ?」
 ミニスカートの内で跳ね狂う秘座は、さながら暗天を往く小船。黒布の足口から生えた内腿から櫂の如く伸びた筋をあやすように撫でられると、ゾワゾワッと背骨が凍えグラビアアイドル顔負けの開脚膝立ちを強要される活動的な脚線が体筋を目一杯使って震えた。
「い、今に見てろ……鑑賞料をお前の命にしてやる……!」「それぐらいの価値は認めるわ。私の大鎌を蹴飛ばしたあんよをすっかりお行儀良くさせて、かよわぁぁいココが犯されて泣き叫ぶ様をまた見せてくれるのだもの? っふふ、つれないお前はこんな娼婦の下着に手を出して人を悲しませるのねぇ。もっと可愛らしいパンツを期待してたのにぃ」
 肌に憤懣を漲らせ、薄紅に染まった頬から湯気を立たせたランセリィの黒薔スカート薇の暗がりの奥に、卑猥な意図の塊が忍んでくる。蟻の門渡りで下着の前後面を繋ぐ股布、小さな琵琶の撥のような形状の漆黒の生地の表面に、悪意に満ちた真珠色の手袋が絡みつく運指を乗せてきた。曲げられて尺取虫じみた動きで、ついつい、と探り這われると、下腹部にジンと幻痛が生じ、破かれた処女膜の出血の乾きも生々しい淫靡な惨禍のことが脳裏に鮮明に蘇らされる。釣り針を刺す勢いでグンッ、と、火炎に巻かれても消えずに残っていた紫の口紅の痕を突かれると、慄きが最高潮に達した。妖しい悪寒に喉まで貫き通される。
「くぁぁぁあぅぅぅううぅぅぅぅっっ! はぁぁぁなぁぁぁせぇぇぇぇっっ!!」
 柱扱いされている長剣をしならせて襟髪を逆立てて暴れる。腹筋を測定するかのように身を折り曲げて引っこ抜こうとし、魔力を全開にする。ギチギチと鳴った爪先の封じ釘が抜けそうになる。が――、想定内とばかりに更に追加の軍勢を周囲に打たれて取り囲まれると、背中の十字架はビクともしなくなってしまった。
「ほぅら、力ずくじゃ駄目。もっと小細工で抵抗してご覧なさいな?」
 その時、何故か目眩を覚えた。怒りのあまりかと思ったが違う。無痛だったので察知が遅れたが、左の内腿にヴュゾフィアンカの蛇頭の尾が噛みついていた。そして牙に通った管から紅い体液と共に魔力を啜られているのが分かった。
(血……貧血……っ?!)
 少女の引き攣った蒼眼と、自身の衣裳も藍液で汚して微笑む淑女の紅眼が見つめ合う。脂肪と筋繊維の内部を抉り摩られる危機感と興奮が肌を妖しい快感で痺れさせた。どん底に近かった余力がたちまちすっからかんにされていく。最も簡易な魔術すら扱えぬ程――。
「……負けない……負けない……っっ!」虚勢の幕を剥がされ非力さを曝かれていく少女。徒労を繰り返し、ごっそりと奪われていく体力。血が足りなくなった所為で思考の纏まらないランセはムキになり、細腕だけで縛めから逃れようと足掻いた。まるで肉食獣の顎に捕まった獲物が、暴れ、振り回され、じわじわと反抗を削がれていく光景の、そのままに。
(考えろ……考えろっ……何か手が……あるはず!)
「あららーぁ! そんなに喜んで腰をはしゃがされると何だか恥かしいわね!」
 その言葉で正面の鏡の存在を思い出させられた。全身を余裕で映せる程大きい、アレだ。
「う……っ」
 スカートに掌を潜り込まされ、腰を上下左右に振っている自分が中に。カッと頬が火照り、鳩尾に熱の塊りが灯る。理性が抵抗の続行を命ずるより早く乙女心が金切り声を上げ、ランセリィは思わず、膝を支点とした屈伸回転運動を止めてしまった。
「あら、もう動かさないの? やっと素直になれたようね!」
 結局どちらでも陵辱者が掌を叩き合わせる。ランセの柳眉が怒りと羞恥でひくつく。
「ね……ぇ、ゾフィア。わたし、どうせなら相手の顔を正面に見て凌辱されたい……」
「やぁよ、口の中で毒霧とか精製してるに決まってるもの。――次の小道具は、こ・れ」
 一度ケープマントの懐に引っ込んだ左手が、羽根ペンを一本、目の前にちらつかせてきた。青紫色の光沢と大きさからして、本人の子供時代の物を使った逸品だろう。根元をペン状に削っただけの簡素な代物だ。片刃のナイフ型の初列風切――鳥翼の先端部にあり常に風に立ち向かう力強く逞しい羽根――で出来ている。
「さぁて、本題に入りましょう……黒頭巾ちゃん。一人でノコノコこんな森の中にまで付いてくるなんて、どういうつもり? 私の尻尾を見ながらふらふらふらり、物欲しげ。狼相手にわざと噛みついてきて、頬をはたかれたがって、ねじ伏せ嬲られるのを心待ち?」
「自分で引っ張ってきといて何さーっ。頬をはたかれたいのはそっちでしょ、嫌われて喜んでる変態ストーカーの癖に! わたしの笑顔にも限りがあるんだよ、捨てちゃうよ!」
「ぅふ、だってお前の嫌がる顔が魅力的なのだもの。造り笑顔よりも。それに駄目よ。決めたわ、お前は本性が淫乱なの。これからこれで証拠を沢山見つけてあげる。あそこを散々に甚振って快楽漬けにしてあげるから、精々抵抗して頂戴ねぇ? 言いたくなるまで好きなだけしてあげる。恥ずかしい自白を沢山聞かせて貰おうと思うわ」
 それが、破廉恥にも背後から臀部を掠めて内腿の間に差し入れられてきた。背面のフリルを退け侵入してきた柔らかくも芯のある感触が、ミニスカート前面の深い峡裂け目谷から、ひょっこりと顔を覗かせ、未だ戦闘の緊張の覚めやらぬ硬く張ったショーツに触れてくる。
「まさか……こんな羽根でわたしを陥とすつもり? て、不潔そうだから当てないでっ」
「迂闊に物事を馬鹿にする物ではないわ。これでも由緒正しい魔界の拷問法で――」
「お医者さんごっこの次は尋問ごっこがしたいお年頃かなぁ、ゾフィ! いいよ、秘密の告白を幾らでも聞かせてあげる。だから聞き逃さないよう耳の穴を杭で抉っておいて?!」
 馬鹿にされていると感じて少女は憤った。ちゃちな道具で簡単に腰を強請らせる雌犬扱いされたと思ったのだ。対する責め手は罵倒を気にせず、湯船に家鴨の玩具を浮かべて水面下から突いて遊ぶ気軽さで、自称にしか見えない拷問器を陰阜に添い寝させてくる。
「っふふ、これ一本で女の躯がどれだけの歓喜を強制されるのか、たっぷりと教えてあげる……っ! 気をつけて? 下手な拷問吏より私は徹底的よ!!」
 ――シュッ。
 幽かな隆起の中央の縦筋を擦られてランセリィの眉が僅かに震えた。密集して列になった毛の一筋一筋が獲物に触れて欲望のままにざわめく。繊維の隙間を抜けた先端が無毛の丘に直に触れてくるような突擽感。腰が数センチ浮き上がったが如き錯覚をさせられる。
「――っ……っぁ……!?」
 ショーツを衝き抜けてきた痒みに琵琶型の華奢な腰が戦いた。湿気った薪に火が灯ろうとする不気味な感覚。雪色の練り菓子に朱を一筋引かれて閉じた陰唇が、内粘膜を微痙攣させる。先程味わわされた屈辱の記憶も真新しい少女は心の堤防を高くした。
「思い出して? あの時、確かにお前は悦んでいたの……。今度は逃がさない。牙も抵抗心も何もかも剥いで、すぅぐに正直者にしてあげるわねぇ?」
 細胞の一片一片に至るまで刻まれた辛苦と不覚にも感じさせられた甘味の思い出。過去への反発心が半尖りの耳をビンと立たせ、殺意に比例した獰猛な笑顔を作らせる。
「うんうんっ、ゾフィアの優ぁしくて腐ぁぁった蜂蜜みたいな愛撫は、今もわたしの心を茨で捕らえて離さないよっ。殺してバラバラにしたいくらい! ってか、嘘だねっ、今だってお前に身体を弄くられてると思うと、ジンマシンで死にそうなんだもん!!」
 口ではまだ対等に立とうと泡を飛ばす少女の隠匿された上質の布に綻びを見つけようとでも言うのか、羽根先が表面を何往復も縦に擦り始めた。斜めに傾き、一回で大量の面積を小人の軍隊の行進じみたこそばゆい振動で覆ってくる。角度を片道ごとに毎回巧みに変え、慣れさせる隙を与えない。
「青臭い硬さで羽先をクニクニ押し返してくるココがあの時は凶暴な本性も露わで怖ろしいったらなかったわ。吸盤みたいにぐいぐい、私の傘付き尾っぽを奈落へ招くみたいに引き込んで……お前はこの腕の中で顔をくしゃくしゃにして喘いでいたわね?」
 虚実綯い交ぜの淫らな夜話を語って聞かせ、魔物喰らいが少女の心を嬲りに掛かる。
「今だって必死に戦う母親に隠れて暢気にこんなお遊び。いやらしくて悪い子ねーぇ?」
「〜〜っぅ……わたし、馬鹿にされるの、大嫌い……今解放してくれたら、百倍返しで済ませてあげるんだけど……!! 聞いてる? ふぁ……、ひゃめっ、くすぐっひゃ……っ」
 スュシュッリシュと擦過音。特に軸に対してV字を描いて並んだ毛先たちが方向に逆らって擽ってくる時に刺激が強い。身を捩る少女の局部がじんわりと熱を持つ。ぷつぷつと皮膚が粟立つ肉の反動がじわじわと喉元に込み上げてきて、臍から鳩尾までの滑らかな肌がムズムズと震えた。控えめに再開された蓑踊りは芯の疼きを伴っている。
「また……内側から崩してあげる――コトコトコトコトとろ火で煮込んで追い詰めて……? その小生意気なお顔がもっともっと恥辱と悲痛で歪む所を見せて頂戴ねーぇ!!」
「……自分の世界に入っちゃう人、嫌〜い。くゃ……、それよりわたし自身を見てよーぅ。この無垢でつぶらな瞳をさー。催眠術に掛けて自殺させてあげちゃうからーっ!」
 鼠が猫に甚振られるような気分だった。不吉な予感に耐えて白い喉が生唾を呑み込む。生地の上から探知機よろしく羽根ペンで摩られながら、秘部から滲み出す快感の鉱脈を探られる。ランセリィの場合、それは中央と上方にあるようだった。肉芽のフードを通過されると、キンッ、とした金属質の痺れが走る。網膜を屈辱の最たる記憶が灼く。
(あんな無様は晒せないんだよ……もう二度と……っ)
 一瞬だけきつく閉じられる瞳。開いた時には決意の燐光が灯っている。
「わたしたちを傷物にした責任を取るのは…ぁ…大変だよ、同情しちゃうっ! 毎晩二人で嬲り抜いて……っみン、お、お父さんも混ぜた4Pで泣き叫ばせてやるんだから!! どう、こっちの水は甘いよ。少しは負けてもいいかなって気分になれたかなかな?」
「その気概と大口がいつまで続くのか確かめてあげる。もっとも、あっさり辱めに馴染んできているみたいだけどねーぇ。下着の温もりと羽根の冷たい刺激が混じって気持ちが良いのかしら? 姉とはぐれたグレーテルは魔女の抱擁の虜になって帰って来ないのねぇ」
 そう、痒悶が痺れに変貌していく。たかだか薄い布に守られているという偽りの安心感が、一筋一筋が針の如く感じられるブラシの生む感触を侮りフィルターで漉し、見目良い物だけを秘裂に塗してくる。するとまるで春に冬眠から覚めた蟲のように官能が這い出してくるのだ。
「酷いわね、酷い。醜いわ。なんて無様な牝餓鬼かしら。汚い膨らみをもぞもぞ掌に押しつけられて指が腐りそう。あの生臭くて白いヘドロを股座からだらだら垂れ流して、今度は私の世界を穢すつもり?」
「……く……っっ! はっ、ん、そうなったら、お前の舌で掃除するがいいさ。きっと寿命が延びる蜂蜜味の薬になるね、頬が落ちちゃうよ……っ! 自分がどれだけ勿体ない天女の御露に触れたか、あの世で思い知るがいいさ!」
 戯けた口調を一転、残酷さを剥き出しにする菫の凶女と、茶目っ気を一転、獰猛な殺意を見せつける激情の魔少女。まるで反発する磁石の同極のような二人。
「……ぃぃぃっに……っ、こぅのぉぉ……っ!」
 羞恥の電流が脊梁を駆け上る。さりとて動かずにいることも出来ない少女は腰を前後に振るくらいしか自由が無く、お手玉の如く弄ばれてしまうのだ。生じた興奮を否定しようと躍起になってダンスする股座から鼠蹊部までの過敏地帯を、フェザータッチの悪魔が徹底的に撫で擦ってくる。丁寧かつ乱雑な愛撫が快楽のメレンゲを立ててくる。
「ふ……っ……ふぅぅぅぅぅ……ぁ…………」
(手が無い……っ?!)
 その事実にランセリィは愕然とした。多少動けるように見えて、塵一つ分も相手の行動に干渉できない。暗くて狭い箱に閉じ込められたかのような閉塞感。
(こ、このぐらい……このぐらい何とかしてみせる……!)
 先細りの未来から逃れようと、足の指を動かして釘を抜こうとし、結ばれた尻尾を何とか自力で解こうと無駄な抵抗を続ける。俄に焦りだした少女の頬の隣に、気がつくとヴュゾフィアンカの顔があった。
「威勢のいいのは、もう終わり? こうされると嬉しくて相手に逆らえなーぃ?」
 綺麗な銀髪に滴る拗くれた悪趣味。自由な右腕で白手袋の熊手を作り、銀袮の玄裳ゴシックドレスのフラットな胸を掻いてきた。奥に潜んだ敵意に痼った青林檎を鷲掴み、強く爪を立ててくる。
つう〜〜〜〜っ! そ、んなこと、ない……っっ!」
 更に、顔を顰めた少女の左の横腹コルセットの裂け目、ミーティに鋼線を巻き付けられた際に出来た鋭利な傷口が舐められた。紅い絨毯の如き柔肉が潜り、肉の断層を掘りつつ湿らせる。
「ぎぅっ、み゛! ぐ……っう?! ……ふううぅぅ、ぁがぁあ…………っっ!」
 ウエハースを砕くように胸の指が食い込んできて、ミシミシと肋骨が軋む。少女の左右の蕾に順番に位置を変えながら何度も何度も、痣の刻印が残るほど強烈に。ゾフィアの右肩に腰を担がれるようにして、ランセリィは仰け反った。端正な顔が苦悶に歪み、長めの前髪を被った切れ長の瞳に烈火が滾る。凶女の全てを背徳に招く忌まわしい笑み。
「分かるわよぉ、軽口の裏に潜む怯えの音色。もう私の指の味を忘れてしまったと言うのかしら? その脆い肉体を歓喜でズタズタに引き裂かれた夢境の一時を! 耐えるのが辛くなったら何時でも躯の力を抜いて。そうしたら一思いにしゃぶり尽くしてあげるから」
「じょ、冗談じゃない……わたしは生まれ変わったんだ。悪夢だよ、あんなの……っ」
 全身の切り傷が今になってズキズキと疼き出し、膿むような熱を孕んで苛んでくる。無理な姿勢で長時間酷使されていると、か細い脚が眩い白磁の肌に汗を滴らせてガクガクと痙攣した。苦悶に満ちた肢体の中で、むず痒く暖かい感触になぞられる腿の付け根のショーツの縦谷だけが、異質で恍惚とした痺れに支配されかけている。傷舐めで鋭敏に撹乱された神経が、陰阜からのパルスを何倍にも増幅してしまい、悦楽の波にお腹の底を浚われた少女は臍の裏側を、きゅっ、と縮こまらせるのだった。激痛の鞭に唆された正直な身体が、唯一優しくされる一カ所に救いを求めて甘い飴を飲み込もうとしてしまう。
(――騙……、されっ、るかぁぁ……っ)
 脇をきつく締めて抵抗する少女は、太腿を限界まで立ててゾフィアの擽り刑に耐えていた。そうすると注意が股間に集中してしまい、ますます羽根触りを意識してしまうのだが。
 元々激戦直後である。たちまちランセリィの息は上がってしまった。
「ハ……ハァ……がぁ、ぐ……ひゃ、ぁん? ぎっ! ぃ……ぁふ……ん……はぁ……はぁぁぁ……っ……ひくゃぃぅぅぅぅぅっっっ!」
 虐げられる少女の疲弊し切った身体が癒しを求めて、少しずつ薄い花弁を従順にしてしまう。下着の背面を咥え込んだプリッとしたお尻が、羞恥で淡く紅潮していく。
(駄目ぇ……嫌だ……!)
 己を律しようと悪戦苦闘する彼女の砂上に楼閣を築くが如き努力を嘲笑い、銀髪の淑女の編まれた揉み上げの紐が肩にぶつかってきた。太股の片方に太い蛇尾が巻き付き、ぐいっ、と蒸れ上がった股間を開かせてくる。
「こんなもの、切り落としておけば良かったわねーぇ!」
 ――シュシュッ!! サスャァァッ、――ヌシャッサシュッ!!
 少女の古傷である包皮に隠れた雌蕊を燻り出そうと、縦筋の上方に押し当てられた羽根が、あくまで麗雅かつ淫惨に擦り立ててきた。桃色の種を割った豆粒がランセリィの中で発芽していく。煩悶の蔓が腰に絡み、次第に陵辱摩れした膝や熱を持つ胸に進んでくる。
「あ……あ――――っ! っか……この……ゅ……ぅぅ……んっ!」
 残酷なまでに優しい毛筋が少女の殺意を甘く侵蝕した。時間が巻き戻るような恐怖。臍の両側に浮き出た腰骨に無数の羽虫が集ってくるのに似た不安で怪奇な痺れが、どんどん激しくなっていく。マントルの対流に乗って運ばれる大陸じみた蠕動で、紅い粘膜内のクリトリスが蠢き、ムクムクと肉の入道雲となってそそり勃ち始めていた。フードを剥いで少し頭を見せている。そこで動きが止まったのは頑強な精神的抵抗の賜物に他ならない。
「う……、うぅ……っ!」
 汗ばみを啜った布を擦過するヌシャリヌシャリという音が響く。濡れて張り付く黒く妖艶なカーペットを羽根ペンが撫ぜ、慎ましやかな花弁の膨らみの形を明らかにしていく。
「ねーぇ、さっきからショーツの上を押し上げている、この小豆みたいな塊はなぁに? 何だかあそこの手応えが池の丸石からふっくらしたお饅頭に変わってきているのだけど、これはどうして?」
「ひんっ、し、知らない……っ!」
 時計台の屋根上で凌辱された際の奇妙な恍惚を思い出したランセリィの肢体が震える。処女喪失の悍ましい激痛と、その後の悪夢的な饗宴の記憶が脳裏にまざまざと蘇る。嘘吐きを罰するが如く強く押し込まれた肉厚の鉈が、包皮の火山口の奥に溶岩の如く不吉に照り輝いて覗く赤い粒を、ずざりっ、と撫ぜた。
「っ、きゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっん!!」
 甲走った嬌声が上がり、両肘で頭を挟んで少女の肢体が硬直した。怯えて縮こまるその挙措とは反対に両脚は開き、腰は前に迫り出されてしまう。悩ましげにうねり咄嗟に食い縛られた膣口からバター塊を鉄板で熱したようなトロリと熟成された愛液が滲み出す。
「あらあら、どこかの蜘蛛さん相手に大暴れしておいて、どうしたら清純ぶってそんなことを言い張れるのかしらー? じゃぁ、別のことを尋ねるけれど、こっちはなぁに?」
 対象がやや降り、全体的に汗で湿ったショーツの一点を指された。その中に特に色の濃い楕円形の部分があるのだ。他があえて言えば清涼感のある濡れ方なのに対して、そこだけが油に塗れたかのような陰靡なてかりを持っている。
「し、知らない知らないっ、そんなの知らないよ……っっ!」
 嘲笑したゾフィアが何か口ずさむと風が吹く。それは少女の腰の右端を通り抜け、生じさせた真空で、秘座をガードする布切れの黒薔薇レースの脆いサイドをスパリと両断。
 続いて羽根ペンを放された少女は淫猥な責め苦から束の間解放されて、カクンと顎を引いて項垂れた。気を張っていた膝が脱力して横に滑り、若腿を開いた股間が大きく喘ぐ。
「強がっていても裏側ではこの通り。自分を支配し蹂躙してくれる相手を求めているのだと納得できた? 答えなさい、リトル・プッシー・プリンセス」
「はぁ……っぅ……はぁぁ……ぁ……っ、ぜ……ん、ぜぇ……んっ」
 無事なサイドを太腿に引っ掛けて、下向きに風を受けた帆のように膨らみ、片側だけ垂れ下がってしまうショーツの股布クロッチ。奥から、つるりとした未成熟なヴァギナが顔を出す。産毛すら生え揃わない白色の丘はホワイトミルクにほんのり混じった苺色の陰唇から、汗と共に一筋の粘液を延ばしていた。そう、はらりと落ちかける下着と股座とを繋ぐ線がある。愛液――。細い糸となって伸びたそれは生き物のように蠢いて、覆っていた黒布が外れてずれたのに合わせてゆっくりと、直線を釣り針型の曲線へ変えようとしていた。
「や――!!」
 ランセが身を揺すっても張力を維持して鉛直下に向かう透明な柱。そこを遡る様にして、羽毛が秘園に近づいてきた。鮫の牙に狙われた小魚の危機感が身を包み込む。
「ごめんなさぁい。それとも、先刻たっぷり犯してあげた時の物だったかしら? 可愛く喘いで随分と一杯流していたもの、まだ中に溜まっていてもおかしくないわよねーぇ?」
 耳元で低いトーンで囁かれると、子宮口の辺りが指で捏ねられるように疼いた。
 ――プニュ……シュチュ……ッ。
 暴行のことなど必死に忘れて鎮座しようとする風情の未熟な女性器全体を、順向きの羽根ペンの尾が透明な糸を巻き取りながら触れるか触れないかの微妙な軽さでゆっくりと摩り上げて行く。考古学者が化石に付着した土を羽箒で払うが如き丹念さと愛を込めて。その異常な熱意と執着を以って初めて、この部位は真に官能器官として開花して行くのだ。
「……くぁ……ぁ……。……ふ……ぅ……ぁ……ぁぁ…………っ!」
 無毛の丘をチェロの弓のように横断されて、演奏される少女の可愛らしい口をついて鳴き声が零れた。埃を散らすように理性を危うくされ、腰を甘い媚薬に蝕まれていく。
 ――スャッチュ、クショリ……。キチィィ――ツプッ!
 すべらかな丸い肉盛りを自在に滑る青紫色も艶やかな羽根のナイフが、硬く閉ざされた秘め口の僅かな綻びをこじ開けようと、鋭い切っ先の数ミリを刺し沈ませてきた。既に一度崩落を経験している天の岩戸は気を引き締めて貝の如く縦筋の門を閉ざし直すが、蟠り続ける桃色の微震に緩まされて、細い糸蚯蚓を咥え込んだかのような隙を消し去れない。
「あらあら淫売の亀裂は若い身空で緩くて大変。将来が心配だわー?」
「この邪念女ぁ……っ いつか腹の中に消毒薬をぶち込んでやるぅ、ゥゥ……!」
 真っ直ぐな薄刃がパッキンのゴム縁の如くぴっちり合わさろうとする締め付けに頭を挿して、くにゃりと曲がった。かと思うと、ラビアのピザを掬うサーバーのようにスルリと窮屈な裏側に潜り込んでしまう。恍惚を孕んだ陰阜は極めて敏感に反応した。肉ビラの内膜が簾を叩いたように波打って熱い呼吸を繰り返し、秘肉の弾ける快感が爆発したのだ。
「っうくっぅ!」
 内股になろうとした少女だったが、拘束に手綱を引かれて阻まれてしまう。
「ひゅ……っ……ぅぅ……っく……ぅぅァォンッ!」
 息を止めた唇よろしく硬直した秘裂の筋に侵入してくる羽根先は、中央の軸から斜め上に硬いピアノ線のような菫色の毛を、迷いの無い直線で伸ばして織物の如く密集させ、全体で快楽の凶器を形作っている。粘膜に直に触れてきた感覚は粛然と整列したハープの弦のようで、全長から見れば氷山の一角に過ぎない尖兵だというのに、くの字に折れ曲がった毛先の篦が踊る度に、未熟な牝肉に痛美な賛歌を掻き鳴らされてしまった。
「に゛ゅぅっ……ぁ……っ……! くょみ……っん……ふ……ぅぅ……ぁあああ!」
 溝の至る所にミニチュアのスコップを突き立てられ掘り返され、電撃に耕される肉畑。乙女の花園が火照りを増し、貪欲な本能の疼きに耐えかねて、恥辱の蓋をずらしていく。内側に籠もっていた青酸っぱい淫臭を、潜めていた吐息を漏らすが如く外気に混入させていった。妖鳥の翼に魅入られた陰唇が夜明けに咲く朝顔のように花開かされていく。
「ふぁ……ふひゅぁぁぁ……っ! ひゃき、そ……ぉ……ォ……ッ!」
 鼻梁の麓に血流を集め、苦しげに眦を下げるランセリィ。腰から下がブルッと震え、額に汗の珠が浮かぶ。含み笑うゾフィアの思惑通りに。
 ――チュンッ!!
「っひゅ!!」
 先端で縦筋の上端、尿道口や痼りの有る部位を弾かれた。剛毛の拷問具が今度はエッジを、それと分かるほど綻んだ幼いクレバスに沿わせてくる。
 シャープで攻撃的な輪郭を作る羽根の縁は、我の強い毛先たちが競って芯を伸ばしている所為で不揃いで、その段差は狂人の書いた支離滅裂な楽譜の音符並びもかくや。
「……触れ……る、な……ぁ!!」
 パックリと割れた姫貝、ささやかな地割れを起こした無毛の丘の頂上。滲み出した半透明の愛液の釉薬に塗れて朱鷺色に輝く可憐な肉器の谷底を、繊毛製の櫛の歯がたおやかに梳いてくる。或いは向きを変えて櫛の本来の用途とは九十度違う縦方向に。
「ひあっ! ぁ……ぁァ……アァァッッ!」
 鼻に掛かった嬌声を尻目にゆっくりと、卑濡れして存在感を増した鋸が引かれ始めた。
 ――ジャリ゛ッ……ジャリ゛ィィッ……ジャリ゛ッジャリ゛ッジャリ゛リッッ!!
「うあっ……うああっっ……うくキャああああああああああああああああっっっ!!」
 その瞬間、凄まじいスパークが牝門で起こり、突かれた鞠のように少女の肢体が弾む。
(か、硬いのがつんつん……っ! ヅンヅンゥゥゥ〜〜〜〜ッッ!!)
 防壁を越えて牙を剥いた拷問具の猛威は、ショーツ越しとは比べ物にならぬ凶悪さだった。強く擦られた羽根ペンが、風に吹かれた稲穂の群れの如く横に倒れ、バネ仕掛けのような弾力で戻ろうとする。その際に歳幼い魔属の少女の敏感な粘膜を爪弾き穿ち嬲り抜く。
「っ……ゃ……ぁら゛……っ! あそこ、切れる……破けちゃうよ……ぉっっ!」
 二つの隆起が平行に並んだ背の低い山脈の谷底が、地の底に吸い込まれるように割れていく。牝の淫欲に訴えかける火種が未熟な媚肉に轟々と流れ込み、開いた魚の腸を刮げ落とすような熟練の技巧を擦り込まれてキャパシティオーバー。目の眩む激烈な花火に見舞われた腰が蕩けそうな炸薬感に支配されていった。体躯を真っ二つに切り裂く鋭い愛撫に、お腹が背泳ぎをしながらくねって悶え、理性までもが削られていく。
 ――ズリュリュリ゛ッッ!! ヌュルザッ、ザリンッ!
「むみゃぅぅぅぅう゛っ!! ひゅぎゃンッ、ぁぁゃ……っ……ふぅぅぅぉ……っ!」
 左右に激しく身体を揺らし、脚の関節が馬鹿になるかと思うくらい身を揺さぶる。強張った筋肉に更に電流が加えられ、どっと噴き出した汗がドレスの中を蒸し風呂に変えた。
「声が足りないわ? ここをこうしたら、もっともっと聞かせてくれるかし――ら!!」
「くひ……きゅ……ぅぅぅ……っ……っ――――――ッッ!!」
 瞳を細めたゾフィアが筆記具をバイオリンの弓に見立てて使い、包皮から半分だけ頭を脱しつつあった陰核を轢き潰してきた。目の細かい鋸歯じみた周縁が皮を剥いで、下から覗いた紅い真珠を洗濯板も青ざめる激しさで擦過する。
 ――ッジャリッ、ザジャッシャッッ! ニュグ、ズチュズュジャッッッ!!
「ふゅくああああああああ゛あああああっっっ!!」
 痛いほどの歓喜。急に髪を後ろに引っ張られたかのように少女が仰け反る。閉じることさえ許されない太腿が俎に釘で打ち付けられた魚の如き断末魔の痙攣をし、たちどころにコートを脱ぎ捨てた剥き身の陰核が刺激でのたうった。喉を嗄らして泣き叫ぶランセリィ。
「うくぅ……く……ぅぅ……!! きゅひぃぃぃぃぃぃぃぃイ゛ヒィィィイイッッッ!!」
 ――シュヂュッ、シュヂュッッ!
 股間にぶら下げた提灯に火が付いた。華奢な体躯が重たげに腰を振り、荒涼とした櫛の歯に急所を縦横に梳かれて、何度も何度も気の遠くなる爆発が起きる。
「弱いなんて物じゃないわねぇ……もしかして大好物なのかしらーぁ?」
「ああ……あああ……っっく! くひゃァッ、くひゃああああああああああっっっん!!」
 濡れ羽のまだ乾いていた部位を用いて充血した粒をぴしゃぴしゃと打擲されると、左右に開いた陰唇の蝶の羽が哀れにひくつく。幼さに似合わずネットリと情欲の籠もった肉洞が性の芳香を立ち昇らせる。……ドロリ、と割れ目から半濁の液が滲み出した。傷のついた洋梨から、果汁が滲むかのように。内腿に幾筋にも枝分かれした河を描いていく。
「はぁぁ……ッ、……っ、ぁ……く……、ハぁぁァ……っっ!」
 完全に過保護な取り巻きを脱して台座に収まったミニカラットのルビーは凌辱の涙で淫ら腫れ、気忙しく開閉を繰り返す少女の口腔では白く艶めかしい八重歯が唾液の糸を引く。
「うふふ、お前はただの息継ぎでそんなに熱い吐息を吐き出すの? 敵に触られただけでこんなに発熱しているのは、何かの持病なのかしら? 折角強くなったのに末路はこんな……本当に本当に残念ねーぇ!!」
「うるさいうるさいうるさいぃぃっっ!! わたしを惑わ……ぁ……ァァァ……っっ!」
 次第に粘りを増していく少女の液体を啜り上げる羽根ペンが重さに負けて垂れ曲がる前に、と、垂直に閉じ谷に当てられた。「ちなみに、不潔そうで悪かったわねぇ? これでも定期的にお手入れをしている宝物なのよー」とは、やや恨みがましい持ち主の弁。
「これをヴァギナに突き挿さされて――魔界の女がどれだけ魂を飛ばしたことかしら!!」
 妖しく危険な予感に「ひに゛っ?」と腰を震わせたランセに向けて、ゾフィアが掌を上げて行く。菫色の濡れ羽が滲み汁を滴らせながら、薄赤の谷に矛先を沈ませていった。
 ――ツププッッ!!
「くぁっ、ぁぁぁぁんあぁぁぁぁぁぁぁ――――ッッッ?!」
 フォークリフトで運ばれた先端が、悦楽にぬかるんだ秘め口の露わになった小振りの岩窟に突き立つ。その一気に槍で秘部から首の根元まで突き貫かれたかのような悍ましくも甘い衝撃をランセリィは生涯忘れない。櫛歯にして鋸の役目を果たす魔具が嫌がる秘肉をねじ伏せて、熱したナイフがバター塊に斬り込むが如く朱鷺色の肉に沈み込んでくる。
「あ……あああ…………ああああああああぁぁぁぁぁぁぁっぅぅぅうううううっっっ!!」
 腰が翔ぶような狂悶が炸裂した。それ自体が意志を持っているかのように絡みついてくる毛先の探手。粘膜同士をきつく締めた未熟な女洞を強引に割り開き、痛痒な漣を響き渡らせながら乙女の柔膜を毛繕ってくる。ショートスカートを地震に遭遇したカーテンのように振動させて、迸った歓喜に串刺しにされた膝立ちの少女は戦慄きに頤を委ねた。
 ――ズ……ツィィ……ズプ――――ゴプッジュグププブ……ッッッ!!
「く、ぁ……ハァ゛……――――……ッッ……ン、……ク、ぁ……ァァァ゛……ッッ」
 息の詰まった嬌声が漏れる。内側から剃刀で肉を削がれるような恐怖と、膣壁と羽毛の魔悦的な摩擦発電による快楽の高圧電流。粘ついた愛液を吸って重量感を増す牝哭かせに、ぬらついた膣粘膜を極上の羽触りで愛撫されて、背筋がすぅっと高みに昇らされていく。
「……キィィ……っい!? ふきゅぅぅぅぅぅぅぅぅううう…………っっ!」
 たとえ子供時代の物でもランセの膣に対しては充分に大きい。しかし濡れそぼった花の筒は挑発的で、最初からそれを咥える為に造形されていたかのように大胆に形を変えて、やがて奥まで呑み込んでしまった。それでもまだ根元をはみ出させていた羽根ペンは狭隘な膣肉の圧力に形を乱されてソードブレイカーの背の如き櫛歯になりながらも、ゾフィアに軸をクルリクルリと回転されると、快楽の熱に爛れた肉の鞘を縦横に掻き毟ってくる。
「さぁて、たかが羽根ペンが一本入っただけな訳だけど、如何かしら?」
 肩で息をするランセリィは先程凌虐を受けた緑蛇頭の尾サーペント・テイルの棍棒じみた暴圧さとは趣を異にした狡猾さを、潤んだ膣で盛んに毛を蠢かす、澄んだ夜空の群青を押し固めてプラチナの輝きを一筋一筋に纏わせた宝石細工のような拷問具から感じた。
(く、苦しい……)
 くすっと微笑んだ淑女が、獲物の体内の震えの伝わる筆軸から指を離して放置してくる。
「それ、落とさないようにねぇ?」
 その心配は無いだろう。恍惚に痺れた少女のあどけない膣肉は頬張った鴉羽をしっかりと咥え込んでいる。落とそうと腰を振っても自然と丹田に力が入ってしまい、逆に息をするにも苦労するほど弱った腹筋で締め付けてしまう始末。
「ぐ……ぐ……っ」
 喉の奥に言葉を呑み込む少女。ヴァギナの蠢動に合わせてペン先が左右に振れた。毛先に擽られる膣の奥が、今すぐ両手で掻き毟りたいぐらいに痒い。それは陵辱者が手を下さずとも犠牲者の活力を奪って自動式で絶え間ない辱めと快楽を与えてくる、無間肉地獄を生み出す責め器具なのだった。意固地に膝を折ろうとしない少女の、嫌い撥ね除けようとするが故の臓器の抵抗は全て逆手に取られ、反射してくる愉悦に打ちのめされてしまう。
「く……くぅぅぅぅぅぅぅ……っ! ぐ……ぐ…………ぅ……っっ!」
 幾度も幾度も唾を飲み込む少女の首に大粒の脂汗が垂れていく。ペン先を愛液が伝い、ぽとりぼとりと滴った。絹糸のようにしなやかで針金の如く芯のある羽毛が無数に群生した初列風切が、卑猥な美意識に基づく生け花の肉壺に変えられた幼い粘膜を蹂躙する。
 唐突だが、羽ばたくなどしてばらけた鳥の羽毛がなぜ元の密集状態に戻るのか、ご存じだろうか。毛の間に細かい鉤爪がびっしりと並んでいて 毛繕い等をするとそれがマジックテープのようにくっつき合うからである。今、それがランセリィの膣内で行われる際に、膣襞を巻き込んで掻きむしり、耐え難い引っ掻きの疼きを生じさせていた。
 ――チプッ、チプチププチプッッ!!
(し……痺れるっ……痺れるよぉぉ……っっ!)
 海辺の貝殻の内側のような淡いシェルピンクの粘膜が猛禽の鉤に幾度も傷物にされ、腰の抜けそうな淫らな刺激が襲ってくる。湿潤に分泌される愛液。波打った膣壁を甘美な恍惚のシロップ漬けにされて、劣情に燃え上がった子宮がひっくり返りそうだ。
「くかぁぁぁ……! くぁぁぁ、ふ……ふぁ……く、ふぅぅぅ……くぁぁぁぁ……!!」
 本能の要求を懸命に堪えていた膣壁が、次第にキュゥゥッと収斂を始める。そうなるともう止められない。必要以上に全身の筋肉が張り詰め、拒絶心のあまり自制を失った粘膜襞が力一杯絡みつき、造りの浅いヴァギナが咀嚼を始める。ペン先の痙攣が角度を増す。
 ――ズチゥッズゥッズ……。
 侵犯者を憎んで押し潰そうと蠕動する膣壁は結果的に先端を奥へ奥へと誘うことになり、羽毛を従えた小骨の如く硬い中央の軸に子宮口を、ちょんと突かせてしまった。
「…………ぅ……ぅぅ……っ…………フゥゥ…………フゥ……ゥ、…………ッッ!!」噛まれた臼歯が濡れた呼吸を潰す。押さえた激しい喘ぎ声が固く閉じた唇から漏れ出てしまう。
「抵抗はもうお終い? 甘えたーぃ?」
「く……誰がァ……ッ!」
「なら、説得力のある格好を見せて貰いたいわねーぇ? 壊れたティーカップ・コースターみたいに情けなく腰を乱れさせて、お前の意地やシェリスに対する想いはその程度?」
 鼻笑いを交えて叱咤される悔しさが涙腺を緩める。ギプスの如く固く顎に巻き付いてくるゾフィアの手によって、見ないように努めていた正面の鏡に、ぐい、と顔を向けさせられたランセリィは軽い絶望を感じた。凌辱の熱に魘される夢遊病者がそこにいた。閉じようとする瞼を抉じ開けられれば、嫌でも自分の姿が飛び込んでくる。
(ッそぉぉ……っ、わたし、やらしい……っ)
 あどけない肉のコップに入れられた悦楽の泥を拷問のマドラーが掻き回す。黒薔薇の造形のスカートが卑猥な羽根ペンを挟み込んで左右に揺れる。鋼線に裁たれたドレスのスリットから浮き彫りにされる白い肌はあえかに汗ばんで上気し、ほんのり紅く染まっていた。
「素晴らしい姿だわ。およそこの世の良識全てに反するように、とっても淫ら。そんなつれない真似をしてないで、刮目してご覧なさいな。凄く興奮するわよI'm feeling so horny !? 私だって欠片ほどは残っている常識が邪魔をして、こぉんなみっともない格好は出来やしないわ?!」
 背後から擦り寄るベルフラワー色の肩背套ケープマントに今にも胸から下を包まれそうな、黒炭色のカーボン・ブラックの編み上げコルセット・ドレスは、悶える内にだらしなく緩みかけている。元より幻惑の美を纏う肌着はネグリジェ言うに及ばず、重厚な厚手の布で作られていたはずのミニスカートも媚毒の気に当てられて、水槽に捕らわれた海月の如く矩形で区切られた逆様の世界をなよやかに漂っていた。
「鏡の前で男を誘うプッシー・ダンスだなんて正気の沙汰とも思えない。ファックを強請る意地汚い色狂いの淫売臭が薫って鼻が曲がりそう!!」
「ぇ……へ……っ、わた、ァ、し……ぃ……、の匂いでっ、ふキ……ッ……ち、窒息……ぅ……っ……させ、てっ、フぁ、へて……あげ……たい、なぁ!!」
 ゾフィアの菖蒲色のブラウスの胸元に温もりを伝えて互いを撫で合うランセリィの背中が、未だ筋の柔らかい羽をばたつかせる。細い腰が両側から万力で締め付けられるかのような羞恥に戦くと、鏡の中の卑猥な物体も辛そうに――故に蠱惑的に身震いをする。これではまるでヴュゾフィアンカに仕えて淫らな奉納の舞を踊っている巫女みたいではないか。
(いやだ……こんなの……)
 魂が悲鳴を上げている。開脚磔で煩悶し股間に咥えた羽根ペンの先で空中に奇怪な文字を描き出す無様な格好を映した鏡は精神の墓標だ。立てるべき証も為せず無力に甚振られ、あろうことか喘ぎ声を漏らしている自分の姿。それは快感に勝る一番の責め苦だった。
「この羽根ペンで悶えるということは……お前は育つ前の私にすら敵わないのよね? こんなのまだ序の口。一本目から泣きそうな顔をしちゃって、先が思いやられるわ?」
「ぃ……ぽん……め……? く……っ……ひ……」
「そうよ、こんな面白い状況を一本で済ませる筈も無いわ。何本耐えられるかしらー?」
 クスクスクス。ゾフィアの懐から取り出された二本目の羽根が、異物を咥えて艶めかしく蠢動する無毛の肉丘に触れた。少し柔らかで、先程とはやや感触が違う。
「ハァイ、ヴュゾフィアンカのレイト・レイト・ショー! DJはいつものサーキュラー・ビッチ、今夜のゲストはちょっぴり泣き虫で飛びっきり意地っ張りな女の子!!」
「な……いきなり何を言い出して……! っかああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」
 突然明るい声で悪ふざけを始められて、場違いさに羞恥を覚えた。しかし罵倒しようとしたランセリィは瞬間、膣を引き絞られる快感に捕らわれて嬌声に変える羽目になる。
 逞しくこしの強い毛先がラビアに突き刺され、柔らかな毬栗となって悦楽の針で刺してくる。一転、横に倒されたかと思うと、瞼にアイシャドウをのせるブラシのように優しい毛触りで、強烈な刺激でひくついた厚みを増す陰唇を過激な甘さであやしてきた。
「このお嬢ちゃんが強気の仮面を剥がされて泣き喚く姿を生放送でお送りしまぁす!! さぁ、早速インタビュー! 羽毛のコックを美味しそうに咥えて、自分の指じゃゼンゼン足りないのねぇ? 貪るような激しいマスターベーションは一日何回なのかしらーぁ?」
「や……やぁ……っ……違うもん……わたし……ッ……まだぁぁ……っっ!!」
 ゾフィアが鏡の向こうの自分をスタジオ外の見物人に見立てて話しているのだと気づいて、火に炙られるように全身が熱くなった。結合した小陰唇と大陰唇を離れさせようと間に差し込まれて擦りあげられる、秘奥の谷間を擦られる快感電撃に横腹がゾクゾクと恍惚で撫で上げられた。鴉の毛先で弾かれて蕩けた愛蜜が、ぴちゃぴちゃと内腿に飛び散る。
「くぁ……ぁ゛っふぅぅっ! も、やめろぉぉぉぉ……っ……離せぇぇぇぇぇっっっ!!」
 四肢を拘束された膝立ちの少女は唯一自由なお腹をコルセットが外れそうな程、振り乱す。膣肉に喰いついてくる羽根が擦れてますます酷いことになり、最初の責め具を頬張ったクレバスが口腔を動かして、生えたペン先で宙に絶叫と狂気に満ちたSOSを刻印する。
「あら、ラブレターでも書いているのかしら。私も何か書き加えて良いかしら?」
「ひゅっきゃあぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
 一筆文句を認めようとするゾフィアが推敲の風情になって、手遊びで赤い文鎮を打ち始めた。トントン、と機織りのような規則正しさで股間を叩かれると、それだけでもうランセリィは堪らない。時々思い出したように筆を起こすと硬い切っ先で、充血した肉の粒に流麗な文字を書き込んでくる。芽吹いたばかりの敏感急所がグングンと体積を増し、粘膜張力の限界を主張して今にも破裂しそうな程にぷっくりと反り返る。
「あ……あガッ……ひぃ、ィ…………ッッ!!」
 ゾフィアに覗かれるランセリィの横顔から、見る間に余裕が削げ落ちていった。
「自分の姿を見て悶えるなんて、まるで蝦蟇蛙ねぇ? 質問の続き。汗をかくのが能力なの? それともダイエット? ご覧なさい、あんまり激しいものだから鏡が湿気で曇っているわ。それに……クククッ、香水入らずで羨ましいわねーぇ!!」
 頬を寄せてくる魔物喰らいと仲良く吸い込ませられて、己の杏香の汗が鼻腔に満ち薫る。頭の奥を卑猥に擽り耳裏から頤下にかけてジワリと毛穴を開かせてくる、目も眩む甘酸っぱい発情臭に、下腹部が疼いて内側から猫の爪研ぎを受けるかのように褶曲してしまう。
「……んふゅぁ、ク……グぅぅ……っっ! ……こんなの……嘘……ぉ……っ!」
 目の前に僅かに不鮮明な淫靡なオブジェがある。片眼を顰めた半よがりの貌で喘ぎ、カタパルトの如く傾けた胴体を痙攣させていた。直視に耐えなくて堪らず眼を閉じる。
「アハ……アハハハハハハハッッ、だんまりさんにはお仕置きねぇ!! っふふ、いくわよぉ……? お口が滑らかになるまで小生意気な理性を絞り取ってあげる!」
 肉の柱と化して腰を泳がせる盲目の魔少女に暴虐の手管が襲いかかる。薄めた糊の如く粘り始め一本目の胴に垂れて行く愛液が刷毛の様に使われた二本目で掬い取られ、陰部全体へ塗り広げて、反転、クリトリスの頭を平手打ちするように何往復も摩られた。勃起の根元に差し入れた力強い先端で、針金で鍵穴を探るような仕草で責められる。
 ――ヌッチャ……ジャザルュッ、クプリュッルチュゥゥゥ――ベシッベシンッッ!! ――クショチョショリ……ッ……クニ、ニニ゛ニィィ……ッッ……!
「くひゅ……ぃみに゛ぃい……っ……! ら゛ぅっ!? ぅヴるぅぅお゛ォおォォォォ……ッ……くオオオ――――ッッ!! ッ――かゅきゃんゅっ、ハきゃぁぁぁぁアっっん!!」
 亀になりぶんぶんと首を横に振るランセリィだ。膣内の肉の集中したGスポットの膨隆に青紫色の光沢を持つ悪魔が擦り付き、ズジュヂュチッ、ジュヂュヂュッと、逞しいブラシ掛け。神経の昂ぶった粘膜がひりひり焼けつき充血して腫れ上がり、快感で煮崩れていく。真っ暗な世界でもそれと分かる背徳の火花が網膜に散り、食い縛られた八重歯が甘い芳香の燻る唾液を、嫌がるのを抉じ開けられた瞼が煮え滾った悔し涙を流す。
「ふぅぅぅっくァッ、ふぅぅ゛ぅぅぅぅぅ゛ぅぅぅぅっっ!」
 一本目のペン先が跳ね踊る。まるで咀嚼するように熱い締め付けが蠢き、軸が揺れる。
「あっは、喜んで尻尾振ってる犬みたいねぇ!」
「ち、ちがっ! あぎにゃぁぁああぁぁぁぁぁっっ!! ハァッ、ア゛――――ッッ!!」
 悦楽の震源地を強引に掘り返されて息が詰る。ゾフィアの指が狂おしく暴れる一本目の軸を摘み、既に二度も侵入を許してしまった聖域の肉畝を耕すように掻き混ぜてきた。
「……っ……〜〜ッッ!! きひ……ゅ……ォォォオオ゛オッンッッ!!」腹の底から声を出させられてしまう。鴉羽根の密集した毛の一本一本が襞の溝を掻き分け、最初の貫通時にも触れられなかった幼い雌壷の隅の隅にすら、悦楽の魔手を伸ばしてくるのだった。
「ひ……ぃ……っく……ぃひ……っ! く……くぅぅぅぅっっんぅぅぅっっ!」
「ほぅら、犬じゃない? ハッハ、と舌を出して涎を垂らしちゃってぇ?」
 羞恥心に一気に全身を灼かれた少女の開閉する肉ビラを舌に喩えてゾフィアが笑う。
「餌付けは効果覿面のようねーぇ!! アッハ、条件反射? パブロフ? あそこを擽られただけでお腹を見せるだなんて、負け犬はどう足掻いても所詮負け犬なのかしら!!」
「自分のことじゃないかぁぁぁぁっっ、それぇぇぇぇぇっっっ!! 負け犬ッ負け犬ッ負け犬負け犬負け犬負け犬負け犬負け犬負け犬負け犬負け犬ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!」
 犬などと言われても抵抗できない。再起不能になるまで矜恃を滅多打たれるしか道がない。ガチガチと怒りで八重歯を噛み合わせ、涙を流して絶叫する魔少女の軋みを上げる心が魔物喰らいに貪られていく。たとえ全てが枯れ果てようが、絶望に首肯するその時まで。
 それは生贄を官能の業火で焼き尽くす、焦熱地獄の火起し棒。根元に向けて次第に青を白に薄めていく一本目をじゅくるじゅくると回されると、燻った肉体の底で救いようのない牝の快楽が湧き、淫らの焔が燈っていく。
 上下運動を加えて捻子回しの抽送を始められれば、攻撃的な形状を遺憾なく発揮した櫛歯が不揃いな先端で女陰粘膜を螺旋に扱く。そして無法な吸引力で擦過の渦潮の中央に、桜より儚い皮膜をきりきりと巻き込みながら食い千切るように引っ張るのだった。
 理性の爛れる歓喜の波濤が飛沫を上げて苦しめてくる。歩調を合わせた二本目にローション込みでさわさわと被虐を受ける陰唇が、陸に上げられた魚の鰓の如くピクピクと小刻みに動いた。それ自体は触れられていないクリットが真っ赤な風鈴となって哀れに揺れる。
「私のは戦略的撤退っていうのよーだっ。本当、可愛いわぁ、ワンちゃん! なぁに寂しそうに遠吠えして? これが欲しいのねー? はい、もう一本追加ぁ」
「ひっぁ!? 糞……糞糞クソォォォッッ!」
 濡れ切って使い難くなった道具がとば口に添えられ、ズブリと音を立てて刺し込まれた。
「ひぃぃイっっ!! ふぁっきゃひあぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁっっっ!!」
 ランセの頭が跳ね起きた。新たに挿し入ってきた羽根に、膣の天井の魚の砂擦りの如く盛り上がった膨隆が無惨に掻き擦られる。海蛇となって荒れくねる桃色の絨毯が強引に押し分けられ、軽いスナップを効かせて振動を掛けられたチェーンソーに胃の腑が激しく響き混ぜられ蕩かされていく。緊迫した腿が残像を見せて笑った。痺れ切った鼠蹊部から感覚が失せ、陰阜と肉芽を晒した腰が時間の狂った乱調子の振り子となって左右に揺れる。
「あ、あっ、ァ、ア゛ッ、あっ、あ――っっ!!」
 二重爆撃に晒されて、たちまち少女の陰洞は土砂崩れを起こした。グンッと一思いに激しくヴァギナの濡れ矛を押し込まれると、お皿の底に猫じゃらしを突き込んだように先端が滑る。水泳のターンの如く背を丸めた羽根表面のざらついた感触に湿潤な最奥をベロリと舐め上げられて、革靴の中で曲げられた指が血が滲みそうなほど強く釘を掴んだ。
「っあ゛ぁぁぁぁぁァァァ゛――ッッ!! お腹ァっ、暴れッ、わしゃわしゃが、増えェェェッ! 翔ぶぅぅっっ、翔んじゃぁぁぁ――ッ――ァァァアアアア――ッッ!! ら゛……め゛ぇ……っ、ひゅぎゃああああああああああああああああああっっっ!!!」
 悍ましい歓喜に腰が破裂する。駆け昇る恍惚に脊梁が砕け、理性が煮崩れた。
 ――ジュピッッ!!
「ィひ やぁぃレェェエ゛ェェェ! ヤぁぁッ、や゛ぁぁらぁぁぁヨ゛ゥゥゥッッ!!」
 ――ダンッダンッ! 昂ぶりと拒絶の板挟みになったCの身体文字がバスケットボールのバウンドの如く上下に跳ね回り、床に打ち付けられた膝が悲痛な足拍子を鳴らす。
「み゛ィィィッぐ……きゅみっハアァッオオオ゛オオオオオオオ――――ッッッ!!!」
 ――ゾジュクンッッ、ビクビクビクンッッッ!!!
 ショートの撥ね毛が緊張のあまり、ぶれる程振動し、乱れた前髪の簾が汗を散らした。
 受胎器官で小爆発が起こり、少女の意識を刹那、彼岸の波打ち際に打ち上げさせる。
(なにか掴まるものぉぉぉっっ、白いっ、全部白いぃぃぃぃぃっっ!!!)
 子宮頚管が俄に灼熱の回廊と化す。ヌガーを熱して形を失わせたようなベットリとした白濁蜜が流れ出す感覚。孔を擽る二枚羽の先端に卑呪の祝福酒となって振りかかる。
「…………ふぁぁぁぁぁ…………ッ……っハァァァァァァァアアア゛……ッッ……!!! っキゃいい――ッ――いイいいいいいいいいィィィィィィィィィィィ――――ッッッ!!!」
 長々と一声叫んで、がくり、と茎を手折られた花の如くランセリィの頭が垂れた。ゼェッゼェッと舌を突き出して喘ぐ。頭に重い物が詰った様でとても苦しい。
 ――ジュクリ……。脳味噌を握り潰してくる燃え滾った圧迫感に誘われて、まるで地下水が染み出すかのように、肉土から濁ったジュースが滾々と分泌されるのだった。
(イっちゃっ、た……? ……わたしの中で……本気の汁が一杯流れてるぅぅぅ……っ)
 ぎりぎりと拳が握られる。とば口から漏れた粘液が大粒の雹となって鏡面に広がり、脚の付け根やニーソの飾り縁にまで垂れてきた。誇り高き幼身が生々しい官能に穢される。
「っふふ、もう立てない?」
「そんなことぉ、ない……ぃ……! ひ……ん……っっ」
 二本の羽根箒が膣内で触れ合い、下半身が崩れるような痛烈な痺れが膨れ上がる。擦れ合った毛先の振動が何倍にもなって伝わって、ダイレクトに頭に反響する。異物に慄いた膣が勝手に蠢き、ますます過敏な粘膜が羽根と擦れ合ってしまう。
「ふぅぅぅぅ……ふぅぅぅぅぅぅ……!」
 快感の連鎖爆発を飲み込もうと少女は身悶えた。甘く荒々しい歓喜の渦の中で今にも溶け落ちてしまいそうな細い腰を前に迫り出す。背後の剣に、己の悪魔尻尾で柄に縛られた腕ごと体重を預けてすがりつくことで、辛うじてランセリィは姿勢を維持している。媚薬性の羽根タンポンが独りでにざわめき、性感が目を覚ましたばかりの幼いヴァギナを天井に舞い上がるような心地でねぶって、すっかり目元に朱を掃いた少女の理性を従順に鞣してくる。乳首を痼り勃たせて尖った胸先を竪琴を奏でるように爪弾かれた。
「ふぅぅぅ――はァぁ……っ……こ……んなの……っ、ァ……何でもォォォ……っっ!!」
 薄い胸が忙しなく上下する。チョキを作ったペン先が嘲るような開閉を繰り返した。
「ふふ、辛うじて溺れていない、といった所ねぇ? だけど、そんなに必死な顔で我慢しないとならないなんて、自分で根は淫乱だと白状しているのも同然じゃなーい?」
「くぎゅうううううぅぅぅぅぅ……っっ!」
 涙で前が見えなくなる。嫌々をするように否定で左右に首を振る。
(……い、今はまだ思考、保ててる……けどっ、これ以上……、こんなのいつまで…ッ)
 ひたひたと忍び寄る破滅をただ待つだけの無力感に打ち拉がれ、アクメの氷山の一角を体験した蒼瞳が澱んだ。険のある目尻が熱に浮かされる。俯いた表情から抵抗の牙が剥がれ落ち、弱い素顔が覗いてしまう。閉じるのを忘れた口が魘されるような呼吸を繰り返す。
「ハァ゛ッ、ハァァ゛ッ!!」
「私の大好きなとてもいい顔よ、拮抗していた戦う決意と快楽への誘惑が、どんどん奈落の方向へと傾いていく。背徳の宴へようこそ? 一度でもそんなエッチな目をした奴は、もう虜。身も心も嬲り堕として、浮かんで来られない深淵の底に沈めてあげる」
 ボタボタと愛液を垂らし、潤んだ瞳を己の汚した床に落とす少女の耳元で女が囁いた。
「ここは終幕のないネバーランド。皆であんな風に遊び続けましょう?」
 凶女の指に涙を拭われ、顔を正面の鏡に向けさせられた。また無力に囚われる姿を見せつけられるのかと覚悟を決める。が――。更に予想だにしない光景が目に飛び込んできた。
「……な、なにこれ……っ、わたし、こんなことしてない……!」
 長剣の草蔓の柄に縛められた手首が憤激のあまり強張る。眼前の別世界ではランセは拘束されておらず、同じ姿勢で背後の女の首に両腕を回してしがみつき、意固地に凌辱を拒絶する本物とは正反対に、甘えながら積極的に腰を振って羽根ペンの味を貪っていたのだ。
 ――アン、気持ちいィ……ッッ! ワタシ、これ大好キィィィッッ!!
 ご丁寧に音声付き。下着を脱いで剥き出しの未熟なラビア。熱く潤んでぬかるんだクレバスに羽根ペンが突き立っていて、グボグボと愛液を泡立て卑猥な抽送活動をしている。
 淫蕩な微笑みを浮べるそいつが、快感に抗おうとするオリジナルへ見下した視線を投げかけてくる。空中で前後に8の字を描くように腰を振り、悦楽に酩酊して大きく開けた口腔を己の舌でねぶり廻しながら、尖った八重歯を上下させて無言でせせら笑ってくる。
 相手を油断させる策略を持って犯されているのではない。如何なる棘も腹に収めず真に屈服し堕落し、進んで淫らに身を委ねる己の姿。強者に媚びを振りまき保身の為に魂の尊厳を売る姿に、ランセリィは言い知れぬ嫌悪を覚えた。
「鏡に映っているのだから、お前の本性ね!」
「…………ふざけないでよ……っっ!!」
 その言葉は看過できない。胸のボイラーに火を噴かせた少女は顔を背けることなく挑み掛かり、寧ろゾフィアに対する以上の憎しみを以て、砕けろとばかりに鏡を睨みつけた。
(許せない……わたしの姿を真似しておいて、なんて弱くて卑屈でやらしい姿――!)
 ある意味金縛りに会って目が離せなくなってしまい、じっとりと掌が汗ばむ。己の姿を模した悪意の繰り広げる艶舞は、とてつもない破壊力を備えて魔少女の心に羞恥と屈辱の根を下ろしてきた。
「食い入るように見ちゃって、興味津々ねぇ?」
「羞恥責めのつもりなら失敗だね、ヴュゾフィアンカッッ。こんな偽物、幾ら見せられたって殺意しか湧かないよ!!」
「違うわ? 寧ろお前ぐらいの激しい敵意を持っていてくれないと楽しくないの」
 茶化したゾフィアが肩を竦めて羽根ペンの三本目を取り出すと、背後の凌辱者の脅威を忘れていた虜囚の股座を、乗馬の鞭の如く痛烈に引っぱたいた。
 ――ピシッ、パシッ、ビシッッ!
「ひゅ……ぅっ、っキィィィぃぃぃぃぃィィィィッッ!」
 乾いた羽根箒の残虐な不意打ちで紅い真珠を哭かされ、喉を見せて仰け反らされる少女。
「あっは、顔を上げたって駄目! どこまでもお前の恥態を見せてあげるわ!」
 気がつくと、いつの間にか周囲一面が隙間なく鏡に覆われ、小さな半球状のミラー・ドームに閉じ込められてしまっていた。半径一メートル程度、少し身を乗り出して腕を伸ばせば軽々と指の届く距離に、無数の自分が様々なポーズで映っている。
 男に組み敷かれ背後から犯されているランセリィ、複数の女性と入れ替わり立ち替わり肌を重ねているランセリィ、どの鏡像も蕩けた笑顔を浮かべて行為に没頭していた。
「うに゛ぃっ?!」
 憤りすら押し潰す靡獄のプラネタリウムの圧倒的な物量の前に、鏡の外まで噎せ返る淫臭に包まれているかのような錯覚すら感じてしまう。たじろぐ暇もなく――、
「さーぁ、お勉強のお時間よー? 今こそ、私の大鎌を見切った眼と旺盛な学習意欲を存分に発揮する時だわ……っ」
(っ?! しまった、呪術っ? あ、頭と目が動かせない……?!)見開かれた宝石の虹彩の周辺が強張った。金縛りが喉の飾りチョーカーから上、特に眼球に集中し、鏡の中の淫宴から目を逸らせなくなっていた。力の限りを尽くして首を振っても、オートフォーカスのカメラのように何処かにピントが合ってしまい、否応なく別の情事の風景が飛び込んでくるのだ。
「ぅ……ア゛……ッ、どォ……っ、どうい、う、意味……、何をする気っ!」
「うふ、お前の頭の中を私好みに造り変えてあげるのよぉぉ……っ」
「な……ッ、に゛、考えてっ、クレイジーッ! タンマッ、ちょっとタン――ッ!」
 恐ろしい返答に心胆寒くした少女の顔が天頂に向けて固定されると、プラネタリウムの星座の如く、様々な体位、プレイの幻像が網膜を左から右へと流れ始めた。無数の自分の犯される姿が視覚を通じて脳髄に流入してくる。まるで壊れたロボットのようにガクガクとぎこちなく頭部を動かす彼女と対照的に、艶やかな仕草で淑女がころころと笑った。
「羨ましい場面が一杯有って目移りしちゃう? 大丈夫よ、全部ぜーんぶ教えてあげるから!」
(嫌だッ、こんなものになりたくないッッ!)
 いきなり、自分が四つん這いで大男に組み伏せられ頬を張られている光景を見せつけられたランセリィは、何よりもその幸せそうな――ランセ本人には腐り落ちた肉塊のふしだらな模様としか映らなかったが――笑顔に反感を覚えた。ミラーハウスのポルノビデオの主役は裸身である。淫らに輝きくねり、まるで白餅を捏ねられるように小柄な尻にペニスを突き下ろされて恥知らずなよがり声を上げている。
(あれは自分が相手より弱いことを確信している顔だ……! 庇護下にあることに安心して、支配されることを喜んでいる――っ!!)
 力の序列に関して潔癖性とも言える精神の持ち主に取って、それは忌むべき敵だ。うねる柔肉から剣を突き立てる隙を探し出し、憎しみで肩を激しく上下させながら、頭の中で何度も何度も八つ裂きにしていく。
「糞……全部殺してやる!! しない……わたしはあんなこと絶対しない……っっ!!」
「嫌いなのよねーぇ、ああいうの。手が届いていたら間違いなく首を絞めるぐらい。気になって気になって夜も眠れず絶えず監視しないと不安で頭が一杯、学校で隣の席の思い人に恋い焦がれる乙女みたいに気がつくと見ているくらい!!」
 獲物の罠へのかかり具合に凌辱者がほくそ笑む。まるで魔少女の怒りを煽り生贄を捧げるかのようにスライドショーが始まった。媚びて完全屈服し命乞う惰弱ども――。
(死――――ネッッ!!)
 やることは彼女の戦いの基本姿勢と同じだ。場の全体像を瞬時に見取り、蒼い宝石のような瞳で詳細をつぶさに把握し、相手の無防備な所を全て攻撃的な観察眼で曝いて敵意の刃を刺していく。騎乗位で汗に塗れている奴の、跨った男に揺さぶられながら、まだ蕾のような二つの隆起を無警戒に露出させている胸。松葉崩しで高々と上げさせられた脚の付け根。年増女たちに囲まれて魔女のサバトの如き肉輪の中心に肢体を饗する奴の、黄金色の蜂蜜でコーティングされた小さな羽根の根元。どいつもこいつも自分たちこそオリジナルだと言わんばかりに挑発的にこちらを見下ろして腰を振り、媚態を振りまいていた。
(あんなこと……あんなこと!)
 どんな鬼姑でも、今の少女ほど憎悪に滾ってはいないだろう。どす黒い憤怒を燃料にして爆走し続けるモーターサイクル。止まり方を知らぬまま輪を回すハムスター。
「お前の気性は助かるわ、ハリネズミさん。あんまり泣き喚いて上を見ないようだったら、眼球を抉り出して瞼とも涙腺とも切り離して双眼鏡に括り付けなきゃならない所だもの」
「だまれだまれだまれ!! 誰の頭を造り変えるって? 相手を見て物を言うと良いよ!」
 カッとなったランセリィは強引に呪縛を振り切り、眼前の鏡に白焔を叩きつけた。
 ――パリィィィィッン!! と耳障りな音を立てて、それが砕け散った瞬間、
「はぁい、条件クリア! 召喚サモン、歪鏡の邪精霊ナイトメア・ミラーズ群!!」
 周囲に舞った破片から、か細く滑らかな無数の腕が魔性の暴君に向かって伸びた。二の腕や太腿を掴まれる。拳大だった欠片が全て大きな長方形の鏡に変わり、水面の如く内側から盛り上がる。そこを突き破って生えてくるのは、半透明な少女たちの上半身だった。
 ――クスクスッ。いるヨ、いるヨ、生意気な子供がいるヨ!
 ――ちゃおっカ、ちゃおっカッ、虐めちゃおっカ!?
「は、はなせ、このっっ!?」
 この空間で起きていた不快な現象の正体である、鏡の中に棲まう邪悪な精霊たちだ。硝子の如く透き通った青い肌。硬質なのに柔らかい不思議な髪。アクリル樹脂を埋め込んだような、はしっこい瞳は、紫の光を帯びている。
 彼女らの身体は魔少女に触れた掌から暖かみのある肌色に変じたかと思うと、たちまち変身して藻掻く獲物の姿を取ってみせた。ライアーズ・シェイプチェンジ。悪意と嘲笑の為だけにオリジナルを模倣して存在しようとする歪んだ鏡の使徒たちの能力である。
 扉を抜けて次々と実体化してはタッチと共に姿を変えて淫蕩な笑みを浮かべる、本人の顔。身動きできないランセは溢れ出す鏡精少女たちに群がられてたちまち押し潰された。
「本物の物覚えが悪いそうだから手伝ってくれるんですってー」
「く……っ……、や……ぁ……っっ!!」
 ――おとなしくしなヨ、たっぷり可愛がってあげるヨぅ♪
 ――ワタシ、イき目覚めたての開きっぱなしオマ○コから愛液吸い出すのやるゥ〜!
 裸身を晒した者、衣裳が半脱ぎの者。姿こそまちまちであったが、一様に興奮に肌を染め、媚びた上目遣いをこの空間の支配者であるゾフィアに、蔑みの視線を淫辱の褥に横たえられたランセリィに向けてきている。無数の自分がクスクスと笑い合う。彼女たちが見せ付けるようにその平らな胸で遊び、互いに絡み合い、そして近づいてくる。散々己らの物真似を糾弾した者が見せている恥態への、頽廃的で陰湿な歓びが風の如く吹いてきた。
 ――わたし、こいつらの前で達させられたんだっ、無様な屑共と同じみたいに――ッ!
 何よりも、目の当たりにしている奇怪な現象が、自分自身が卑猥な姿に堕すという悪夢がついに現実の物になりつつあることの象徴の気がして、心に雷鳴の如く恐怖が轟いた。
「く、来るな――っ! お前ら、なんかに、教わること、ないっぃ!」
 羽を緊張と警戒でピンと立てて、少女は自由にならない四肢に力を込める。まずはその強張った肉体を解そうとでもいうのか、婢女の群れが一斉に黒翼に手を伸ばした。堕落の伝道者たる少女たちのふくよかな掌の触れた箇所が、じんわり、と熱くなっていく。
 ――キャハッ♪ ホントかなぁ? 身体は興味津々の癖に強がるもんじゃないヨゥ!
 模倣した身体の具合を確かめるように一斉にあちこちを八重歯で噛みつかれた。丁度スカートに黒髪を潜らせた一体の八重歯が肉芽の真上に刺さり、感電したかのようにランセリィの肢体が硬直する。微痙攣を見せる生白い四肢が獲物本人の舌でしゃぶられる。
 ――アン、この子のお肌って、すっごく美味し〜イ!
 ――敏感でゼリーみたいに震えちゃって可愛いヨゥ♪
「く……ふ……! ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
 身をくねらせて逃げる所を泥鰌の如く捕まえられて、群がる腕に銀袮の玄裳を剥がされる。胸元をブラごとずり下げて、先程享楽の淑女の指につけられた丸い痣を露出させられると、将来膨らむ前の丘陵に繊細なタッチが労るように降り注ぎ、鈍痛を狂おしい疼きに昇華させてくる。
 パフをずらされ露出した、針金のように細い肩に恍惚のキスを。耳やうなじに甘い吐息を吹きかけられながら乱れた髪を梳かれ、羽根筆の抽送を受けて小刻みに痙攣する唇を交代で奪われた。初アクメの残滓に苦悶する卑猥に熱く濡れそぼった呼気が貪られていく。
「んあぁぁぁ……っ!」
 ――興味津々のこの身体をごらんよーゥ? 淫乱な牝猫ちゃン? 期待してる癖ニ!
 蒸れた股座が掴み上げられ、鏡中の自分が味わっているのと同様の歓喜が流入。肉芽をしゃぶられ、唾液を啜られ、お尻の孔に舌を突き込んでねぶられる。胸の奥から荒々しく渦巻く原初の欲求が込み上げてきて、敵の思惑通りに貪欲な渇望を植え付けられてしまう。
 ――ドクンッッ! 自分の体内で巨大な高鳴りの音を聞いたランセリィは、ボルトで固定されたかのように固まって動かない首を小刻みに震わせて抗いを口にした。
「認めないっ、みと、め゛……ふぁ、ぁぐぁ……っ! みとめ、ない゛……ぃぃっっ!」
 網膜から屈辱を刷り込まれる少女を呪縛が取り込んでいく。鏡との距離が、ぐんっ、と狭まった気がし、それが彼女に内在する夢想であるが如く瞳孔の遙か奥、眼球の裏側で、自分がドレスを脱いでいく。まるで頭の中にビデオプレーヤーを組み込まれて直に映像を再生されているかのようだった。俄に焦点を失う蒼い妖眼。それでも宴はますます鮮明。
「ふぁ……ぁぁ……ぁぁァ……ッ…………ッ…………!」
 卑近に迫った淫らな像に頭蓋骨の内部をぐるぐると掻き回される、吐き気を催す快感。ランセは呼吸困難に似た状態に陥っていた。星天を向かされた少女の、つんと上がった顎から白磁の首にかけて汗が伝い、鎖骨の窪みに溜まった甘酸っぱい池がうなじへと流れ出していく。銀袮の玄裳の平板な胸のスロープが縦揺れ地震の如く波打ち上下する。
 ――ワタシたち、もう我慢できないんだヨ。こんな淫乱な身体、真似しちゃったかラ!
 両脇から跨ってきた邪鏡精二人が、ランセリィの太腿に火照りきった陰阜を擦りつけた。
(わ、わたしの身体、イヤらしい……っっ!)
「あ゛っ、あ゛っっ、あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁっっ!!」
 自らの秘肉の温もりと多感な少女特有の甘い薫りに操られて、悦楽の洗礼を浴びた腰が左右にふらふらと動き出す。
(ダメェェ、こいつらに触られて映像を見てると身体が勝手に動いちゃう……!)
「お前を一皮剥いたらどんな牝の本性が出てくるか、知れた物じゃないわねーぇ!」
 膣口に伸びたゾフィアの両指が、ろくろの上で焼き物の口を広げていくような手付きで、精神的苦悶に喘ぐ陰唇を撫で回してくる。ぱっくり開かされた女陰の、二本羽根に愛液を絡めている肉洞に、たいして濡れてもいない三本目の羽根を呑ませてから再び閉じた。
「く……ふ……う゛ぅ……ゅん……ッ!? ひ……ひぁ、く……しょ……ぅ……っっ!」
 乾いた硬い羽毛の感触。ヂクヂクと擽られた粘膜がそそけ立ち、胸に這い上がってきた痛切な疼きに声を漏らさせられる。
「お忘れなのならもう一度、正しい鏡を覗かせてあげるわ。自分がどんな姿を晒しながら意気を吐いているのかをねーぇ?」
 ショーツに残るもう片サイドも斬られると、滴っていた愛液の重みに負けて、ぱらりと黒い下穿きが床に落ちる。同時に硬質のスクリーンに流れていた卑猥なムービーが止まり、CMのように少女の局部が大写しになった。実物通りに細部まで忠実に曝かれた無毛の肉丘は、とば口に三本のペン先を生やして筆立てにされラビアを小刻みに痙攣させている。
 たった今まで晒していた嬌態を否応なしに思い起こさせられる。こんな姿で感じてしまったなら自分もあれらと同じだと、一見理の通った指摘が不安や弱気といった糸で彼女と歪んだ鏡とを繋いだ。魔少女の精神が頑なに願い求める境地と、その対極に位置する醜悪で淫らな肉宴との間の深く広大な溝に、架け橋が作られていくのだ。
「さーぁ、引き摺り堕としてあげる! 間違い探し。当てたリスナーには豪華粗品、この子のパンティをプレゼント! よく見なさい、あれとお前、何処が違うの?」
 全周囲から息遣いがする。視姦の側に回った精霊たちが鏡面に内側から貼り付き、侮蔑しながらこちらの様子を伺っていた。耳に押し寄せる漣の如きざわめきは細部を聞き取れず、あらゆる醜悪な想像を掻き立てる。どうせ口々に囁いているに決まっているのだ。違う所などあるものか、と。募る羞恥。口惜しさ。
(……泣く……もんか……)
 かつては蜘蛛少女の心の澱を啜って甚振った黒銀の魔性は、今度は自身の中に溜まっていく負の感情に内面を喰い荒らされていった。ゾフィアの無慈悲な指先が、複雑に絡み合った羽根を摘んで軽く上下に揺すると、気丈に振る舞う獲物は「ひっ!」と呻いて喉笛を痙攣させ、甘く重たい愉悦の波動に内側をグズグズに蕩かされていく。深く打たれた快楽の楔に心の抵抗を阻害され、媚肉を梳かれる少女の目元が恍惚混じりの涙に濡れた。
「よ、よくも、わたしの身体をこんなにしたなぁぁぁぁっっっ!」
 奇怪な術に抉じ開けられている瞼の目頭の奥がジンと熱くなった。まるで人型をした蝋燭に火が灯ったかのように、淫らな熱に苛まれる未熟な肢体。強固に張り詰めた意志の乱れに一気呵成に攻め込んで、延々と続く姦獄の群像が意識に襲いかかってくる。
「く……くぅ、くくぅぅぅぅ……っっ!」
 眼球の水晶体を貫く刺激的な情景がプライドを軋ませ、視神経を通すだけで疲労が精神に蓄積される悪意の祭典に心がオーバーヒート。脳にかかる桜色の過負荷が具現化した煩悶感が肢体に絡みつき――、
「もう、お前は呪いに囚われたわ! 媚びた顔の作り方を、腰の使い方を――その小さな身体をどう振る舞わせたら最大限の背徳を味わえるのかを憶えなさい。私専用の娼婦に生まれ変わるのよ!」
「い……ゃ……だぁぁぁぁぁぁっっ!!」
 貸し切りの星映館でプラネタリウム宇宙の淫靡の果てを教え込まれる、月の物も知らぬ稚児の女陰。三本羽タンポンが経血代わりに愛液を吸い、湿った綿に小石を混ぜたような抽送で粘膜を擦り上げた。
(か、身体の、感覚が……自分の物じゃ、ないみたい……っ)硬い擦過による堪えがたい疼きが躯を妙に熱くふわふわと浮かばせる。心地よい電気が走る。負けてしまいそうだ。
 いつの間にか少女は背筋を女の胸に預けて、鏡屋敷ミラーハウスの天井を見上げながら機械的なリズムで肢体をくねらせ始めていた。密やかに耳元に唇を近づけてきた銀髪鴉翼の淑女の囁き声と、膣内の羽根の振動が一体となって、まるで催眠術の如く、硬直した少女の荒れ狂う心の内面に揺さぶりをかけてくる。
「ほら、ああいう顔が私は好きよ?」
 反抗の意志を湛えながらも遠くに視線を投げ出したまま戻せなくなってしまった蒼瞳が、相手に誘導されるがままに、内面の凄まじい拒絶を伺わせるぎこちない仕草で指し示された方角を向いた。バックから怪物に激しく犯されているランセリィの顔を正面から見ている光景だった。両腕を家鴨の翼のように後ろに伸ばして手綱代わりに掴まれる鏡像が、噛みそうなほど舌を突き出し眦を下げて服従を誓い、更に過酷な責めをせがんでいる。汚らしい舌で首筋を舐められると暖炉脇の愛犬の如き安堵した蕩けるような笑顔を浮かべ、そして要領の悪いオリジナルに蔑んだ眼を送ってくる。堕ちれば辛いことなど無いのに、と。
「わた……しは……っ……大嫌い……だよっ!」
 憎しみ、嫌悪、ありとあらゆる否定心理の深さを反映した身体能力が、敵と認識している対象たちのふしだらな挙動を事細かに観察し、卑猥な姿を軽蔑と共に脳裏に刻みつけながら、コンマ何秒で如何なる方法で殺せるかの答えを導き出していく。
 反発し攻撃衝動に満ちているが故のその計算高い行為が完全に裏目に出ていた。それでは自分で自分に刷り込みをしているようなものなのだ。脳に蓄積された敵の一挙手一投足の情報が掻き立てられた肉欲と直結し、本人の手から離れて無意識に四肢を動かしてしまう。お菓子の家に招かれ家具を見回した子供が、涎を垂らすのを止められないのと同じく。
「あ……ぁぁ……ぅぅ……ぁ……」
 嬌悶の大海にたゆたいながら、少女の肉体がおずおずと口を開けて舌を突き出した。抵抗心で胸がささくれたと同時に、熱い吐息が犬のように吐き出される。砂糖味の凌辱の罠に絡め取られた少女は、感じる忌まわしさとは裏腹に、観た物に反応して無自覚に真似して動く筋肉に、淫らな舞をトレースして自然と身体で憶えさせられてしまっていた。何せモデルは自分なのだ。これほどすんなり頭に入ってくるレクチャーも他に無い。
「ふふっ、武術も色事も鍛錬の基本は型の模倣と反復練習による動作の常態化よ。全部頭に焼き付けなさい? 憎いでしょう、忌まわしいでしょう、お前が嫌う姿そのままだもの。そんな物の真似をさせられる気分は如何?」
「う……あ……! あ……あ……っっ!」
 一種のトランス状態であった。閉じることのない瞼に収まった蒼い宝石を止まらぬ熱い涙が濡らして乾かさない。学習能力の高さを逆用された少女の小さな頭が、愛玩動物として扱われる屈辱のホログラムで一杯にされていく。
 されてもいない正上位の抽送を反芻するように、腰が上下に揺れ、締まった膣が羽根ペンを握り込む。口腔に突き立った触手が放出した仮想の粘液を飲み干す為に、咽頭がこくこくと動いて空気を呑み込む。怪物たちとの奇怪な体位の真似をしようとした右足は、釘の拘束に後ろに引っ張られて果たせずに終わった。膝で棒立ちになりながらにして数百の凌辱――鏡の中の自分は寧ろ大喜びで進んで受け入れているのだが――を疑似経験――。
 幻実取り混ぜた快感で脳をぐちゃぐちゃにされている内に、桃色の霞が思考を覆い始める。悦楽に弛んだ肢体の神経伝達が非常に間延びした物になり、噎せ返る幻覚の淫臭を吸い込んだ肺腑が焼き焦がされた。蕩けた心臓に沸いた血を送られる脳は、淫靡な映像に頬を染めて選別処理するだけで手一杯。明瞭な状態など遠い霧の中に消えていってしまう。
「あれも凄いわ、恥ずかしい! こんな所にキスマークをつけられて――」
 内腿をさわりと撫でられると、そこに吸い付かれたような痛みが走った。きっと、キスマークも付いている筈だ。
「嫌だ、こんなの嫌だ――っ、あぅ!」
 横隔膜が重力に引かれて急激に落ちていく。そんな失墜の予感と恐怖。憎しみで脳裏を埋め尽くし光景を遮ろうとしても、快感に負けて悪夢に戻されてしまう。本来、反撃の手段を模索するのに使われるべき脳容量が、少女の淫らな空想に埋め尽くされていく。
(わ、わたしの格好であんなことしないで……っっ!! 許せない……あんな……あんな……雄の怪物の肛門を舐めて、愛人の女に椅子みたいに使われて背中に座られてるなんて……! どうしてそんなに嬉しそうに尻尾を振れるの……っ?! あぁ、裸の四つん這いで、誰にも触られてないのにダラダラ愛液を流して……売女……!! 嘘……ッ、男の肛門舐めるだけでイくつもり……?!)
 ――ゾクンッ、ゾクンッッ、ゾクンッッッ!!
「ひっ、ひぃあ……っ!」
 偽りの幻像が四肢を突っ張らせて絶頂に至った時、本物のランセリィもまた激しくのたうった。絶頂に類する興奮を、己が歓喜に屈服する姿にはっきりと感じてしまったのだ。
(このままだったら、わたしもあんな風にされちゃう……?! いやだっ……嫌だ……っっ……本当の本当の本当に嫌だっっっ!!!)
「さーぁ、受けるがいいわ、プリンセス。我が呪詛は、汝の決意を讃え、奮闘を愛で、然る後に侵蝕を以て殲滅せん! いやらしいことしか考えられなくしてあげるわねぇ!!」
 ――『鏡に映った己に剣を突き刺しストレングスて絶命している戦士』。
 ――『寝食を忘れて書物を貪り読み、骨マジシャンと皮になっていく魔術師』。
「あああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」
 二つの力に呪縛され、淫らなシャーマンと化して堕落の鏡と交信させられる白夜の半魔。
 像の回転はまるで四季の移り変わりのように内容豊かで、ノーマルからSMまで、時には目を背けたくなる猟奇趣味までをも幅広く網羅している。卑猥な幻想が頭にこびりついて離れない。振り払おうとしても振り払おうとしても、次々と情景が脳裏に浮かび、理性が目眩を起こしている間に肉体は、少女が会得し始めた牝の性の芳香を薫らせる。
 澱が降り積もって、自分がどす黒く汚されていく感覚。悦楽の脳腫瘍が頭蓋骨の中に増殖して溢れかえる。『自分』が凄まじい凌辱の腕力でねじ曲げられていく。
「想像だけでこんなになるなんてエッチねぇ?」
「あ……ひ……っ……くぁ……ぁ……ひ……ぃぃ…………っ! くぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ! きゅぇぇぇぇぇるあぁハああああああああっっっ!!」
 祭壇に跪かされ、悪意ある鏡によって捻じ曲げられた虚像を全てその身に降ろされた時、凌辱者の手中に陥ちた少女の肉体は煌煌と燃え盛る凄まじい篝火に灼かれていた。頭の中で様々な体位で犯される己の姿が、まるで万華鏡の如く乱雑に現れグルグル回っている。
「ふぅぅぅぅ……ん……く……はぁ……き、ゅ……ぁゅぅぅ……っ」
 意志も矜恃も何もかも剥奪された生き人形の誕生だ。屈するまいと気丈に気張っていた四肢はだらしなく肘や腿を垂れ下げさせ、火照りを持て余して悩ましく肉体をくねらせている。無数の醜悪な性儀式が体内で荒れ狂い、頭の中がイヤらしい思考でパンクしていた。まだろくに絶頂も知らない少女は、まるで一生分のオルガスムスを味わったかのように表情を蕩けさせ、肢体を弛緩させている。
「こんな素敵なコーチに巡り会うだなんて、運が良かったわね、ランセリィ・ザ・タイラント。メッキの剥がれた小さなレディが社交場で要求される全てを教えてあげたわよ?」
 胸を掴まれドレスの上から硬く痼った乳首を転がされると、
「はァ――ッ!」
 艶のある声が出てしまった。肉と心の葛藤を見透かしたように紅眼を細めてくるゾフィア。その時初めてランセリィは、背後の成熟した女の肢体を怖ろしいと思った。
「ち、違う、よ……この声は……ァふ! ち、ひゃがっ、ぅぅ、っぁ……っ!」
 ネグリジェを汗で湿らせ、アウターコルセットで締め付けられた胴を苦しげに捩り、嫌々をしながら緩慢に首を振る。飛ぶ力を失った六匹の銀糸の夢見鳥バタフライが動きを合わせて、姦獄の靄の中に漂い儚く揺れる。
「う……ぁ……あう……ぅ!!」
「手も足も出ないわねーぇ?!」
 雲が晴れるような鮮やかさで半球を作っていた鏡が掻き消えていき、周囲が元の墓標の乱立する状態に戻っていく。しかし、その一枚一枚には今や悪徳の教師となったランセリィたちが居残っていて、それぞれの淫獄に耽りながら、凌辱の総仕上げを見物していた。散々嬲るのに使われた正面の鏡も元の位置に鎮座して、一人の邪鏡精を主に迎えている。
「さぁ、学習成果を見せて貰うわ。踊りなさい! 真の絶頂Feelin' Irieに向けて!!」
 絶頂。その魅惑の単語を聞いて、零落した肉体が芯の深い部分を疼かせる。同時にランセリィは、精神の深淵から込み上げる途方もない戦慄に小さく肩を震わせた。
 ――こいつに肉体を掌握されるっ、快楽に惚けて無防備になった姿を思うがままに引き摺り出されて見せ物にされるっっっ!!!
 それはプライド高く、弱みを見せるのを何よりも嫌う少女にとって、絶対にあってはならないことなのだった。
「ハァッ、ハァ……ッ! 弱いのは嫌……勝つの……勝って帰って……シェリスを構ってあげるの……!!」
「アッハ! その未来はここで断たれるの! このヴュゾフィアンカに喰われるわ!!」
「うああああああああああっっっ、やめろおおおおおおおおおおおっっっ!!!」
 絶対に譲れぬ一線に踏み込まれて、彼女の輝きに罅が入る――。
 視線を正面に直させたゾフィアが、左手をランセリィの股間の拷問具に、右手を胸に添えてきた。計三本の筆記具を咥えさせられた恥部が服従の唾液を垂らし、尖りきった乳首が布越しの愛撫で感電する。周囲を見回せば満席のアリーナの如く邪悪な写し身の群れ。
「皆、一緒に踊る相手がいて羨ましいわよねーぇっ。ほら、お前には私がいるわ?!」
「くぁ……っ……ひゃ……! 嫌っ、嫌ッッ!! イヤアアアアァァァァッッッ!!!」
 ――本日はミンナ、欲張りなおねだりペットのお披露目にお集まり下さり、どうモ〜!
 ――それじゃーぁ、感謝と媚びを込めて、ドキ☆愛液塗れの躾けパッションフラワー・ペリルダンス大会、始め〜〜ェ!!
 淫靡な言霊の波紋が肉に染み込んだ。堕悦に共鳴した細胞が打擲されて悶える際の小さな官能の衝撃が積み重なって、鳥籠の少女の身体をくねらせる。受命を肢体の隅々にまで行き渡らされて身の毛をよだたせた本人を除いて、バレエ開始前の緊張が辺りを包む。正面鏡で同じ姿勢を取った邪鏡精のフェイクが、付け焼刃の舞踏者を嘲笑って腰を使う。
 ――腰振りはダイナミックに! 膝の屈伸角度を八十度と三十度の幅で、アンドゥアンドゥ! あん、もっとやらしく、勃起したクリちゃんがお臍と同じ高さになるぐらイッ!
「ひん、ぴみぃぃっっ!! っめ゛……え゛ぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!」
 太腿に走るのは、内側をすぅっと素早く電流の通ったコードで撫でられる被虐の刺激。
 豁然。指示通りに少女の肉が筋繊維を大仰に総動員させて、プリプリした若い臀部を躍動的に振り立て始めた。ゾフィアがペン先三本を摘んだ所為で加減無しに菫羽のチークブラシに肉襞を擦り上げられ、湿潤な膣に淫猥な紅をのせられていく色情狂。細い三本軸の抽送を受ける陰唇がベビーピンクの裏側を見せて捲れ返り、逆さにした水甕の如く、絞りたての白濁果汁を吐き出す。そして、飾り縁の付いたオーバーニーの膝がまるでスケートのシューズのように働いて、床に垂れ散った愛液を潤滑油にして鏡面を滑るのだ。
「きひぃぃぃイ゛ぃぃぃ゛っっ!! ゃ、らっ……すれ……っ、擦れ……ぇぇぇっっ!!」
「上手い上手い、根っからの好き者って感じが良く出ているわ!」
 幻惑的に揺れる灰華の黒薔薇アッシュフリル・スカートの中が快感に蒸されて熱くなり、上擦った嬌声が漏れる。
「こ、これ、わたしの意志じゃ……! あ……あゅぁっ……」
「当然。最初は無理矢理やらせて身体に覚えさせるものでしょう? 躾やお稽古は! っふふ、ご褒美にまた挿してあげるけど、四本ぐらい余裕よねっ?」
 跳ね馬と化している股間に、またも取り出された四本目の羽根先が当てられた。
 からかうように擽られ、もしゃもしゃと菫色の竪琴を咀嚼するトバ口が歓喜に沸く。汗の雫を散らす尻陵と飾り縁フリルの付いたニーソが半ブリッジの姿勢を取り受け入れていった。蹂躙の波状攻撃で紅潮し、嵐に煽られる野花の如く震え怯える陰唇が、小刻みな手首の振動を受けた柔らかなナイフを含まされると――ジュブルルズュッッ!! それが丸ノコが木材に斬り込むようにして膣口に呑み込まれていく。白いタールが大鋸屑の如く散らばり、肢体を劈く悦楽の雷鳴に拷問舞台の少女は甲走った声で哭き喚かされた。
「きゅあら゛ああ゛ぁぁぁぁぁぁっっ!! ひガぁっ、ァっ、ひィィっ!」
 額にべったりと貼り付いた前髪の簾の奥で、湖面のように静謐だった蒼い切れ長の妖眼が色欲に濁り、煩悶の大波を幾度も幾度もしぶかせる。幼粘膜からうじゃうじゃと這い出した恍惚の蟲が腰骨を覆い、逞しい顎牙を毛穴に差し込んで愉悦の毒で麻痺させてくる。
(たった四本なのに、どうしてこんなに……っっ! 熱い……お腹の中が火傷しちゃうぅぅぅぅっっっ!)
 膣の中は大渋滞だった。容量過多の羽根箒で掃除される逆向きの肉井戸が、滾々と愛液を湧き出させては柄に流す。勝手に動き回る腰が、腹筋でヴァギナの羽根を締め付ける。
「はん……はんぅ……っ!」
「嬉しいわ、大分私にメロメロねぇ?」
 その言葉で今更ながらに自分の体内に侵入して狂わせている物が無機質な道具ではなくヴュゾフィアンカの肉体の一部であることを思い出す。蒼瞳から悔し涙が零れた。
「ぃ……ゃ……ぁぁ…………っ!!」
 ――イエ〜イ♪ 胸はゆっくり揺らして、甘えて相手の指に擦り付けル。腰は休めないで上体とリンクさせテ……。だめだめぇ、硬いよう、自尊心をぐちゃぐちゃに壊してあげないと駄目かナァ? 色狂いビッチのあそこをチェリーポット、もっと素直にアピールしなきゃア!
 無慈悲に指示が飛ぶ。脇から寄り添ってきた邪鏡精が膝を突いて見習い遊女に付くお禿となり、動きのぎこちない太股を柔らかな胸のクッションで掬い上げた。手に塗った若い牝蜜のオイルで滑らせながら、太腿をさわさわと撫であげて補佐してくる。
 ――クフフーッ、あの程度がオルガの全てだなんて思うんじゃないよウ!
 ――ここが使い物にならなくなるぐらいクラクラさせちゃうゾー!
「ヒ……ィィ……ん…………っ!」
 グレイのネグリジェの胸元が、蜘蛛脚となって不気味に這い回るゾフィアの白手袋に、懐いた子犬のように淡く微かな膨らみを擦り付け、三日月のペンダントを時計の振り子にして当てた。赤らみ熟れ始めた青林檎を生地越しにまさぐられ、両肩が快感に酔ったメトロノームの如くふらつく一方で、粘稠な糸を引く愛液を羽根ペンに絡ませながら腰が、卑猥な玩具のシーソーに乗りながら上下運動を繰り返す。甘く痺れて今にも頽れそうな少年的な若々しい太股が痙攣している。唾棄すべき醜悪な鏡像そのままに悦楽に翻弄されて。
「ふゃはぁぁぁぁ、っく……ぅんっ、ひみぃ、ひみぃっ! に゛ぃぃぃぃぃぃっっっ!」
「ほら駄目よ、動きが乱れてきたわ! お仕置きを挿して欲しいのかしら?」
 見かねた正面鏡の姉弟子が、蔑笑しながら相方と巧みなダンスを始める。悦楽の呪縛に四肢を繋がれた虜囚は無意識にその動きをなぞらされ、肢体を波打たせた。リンボーダンスじみた羞恥心のない腰つきで、大胆に陰阜を前に突き出してしまうのだった。
「はぁい、良く姿勢を立て直せました! また、ご褒美。ワンちゃんの次は覚え立てのおサルさんになっちゃった悪い子に、餌のお時間よー?」
「……やめろぉぉぉっっっ!」
「私が手を緩めることはない。お前がタップすることも。互いの強情の螺旋の果てにあるのは宝石が砕け散る瞬間――!! もっともその前に心が折れて泣き出しちゃうかしら?」
「み、見括る……ぁびゃ゛ぁぁぁぁぁ〜〜っっっ!」
 度重なる凌辱の手管に晒された少女の恥部は、慎ましかった形をすっかり歪め、まるで牡丹のように花開いている。中心からそそり立った色素の薄い羽根軸は雌蕊にも見えた。
 そこに迫った五本目が、粘った愛液を掬い取り、糊を刷毛で伸ばすようにして、陰阜に塗りつけてきた。薄い花びらを剛の櫛毛が左右に別れて挟み込み、身も心も虜にされそうなマッサージで扱き上げてくる。同時に間に生え揃ったミニチュアの鉤爪で、今にも破れそうな柔い粘膜を掻き毟り恍惚で甚振ってくるのだ。
「はっ、きゃぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!? ひぁんっ、くゅゅ……っっ!!」
 痒い。熱い。逞しい。コシの強さに女体の芯まで痺れ切る。少女の発育途上の体躯には強烈すぎる、白い肉が蕩け落ちそうな快感。細毛一本で小さな女性器を弾かれるだけで、壮絶な波濤を浴びた四肢関節が緊張で固くなり、華奢な手足が破砕寸前にまで突っ張っていく。それが羽毛の本数だけ無数に行われるのだ。白目を剥きかけた少女は露と形容するにはあまりにも異様な緩んだバニラアイスの如き愛液を止めどなく花弁に流れ伝わらせた。
「ぁがっ、かっ、はっ、はみゅぅぅぅぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
 執拗に女性器を苛み続けるゾフィアが、早くも濡れそぼった詰問矯正器具を股間に添えてくる。少女の腰がぶるりっと大きく痙攣し、蒼瞳が恐怖で見開かれた。開いた赤い亀裂から鍾乳洞の鍾乳石のように、コールタール状の愛液が無数に垂れる。正面鏡の偽物が期待を隠そうともせず両脚を開き、本物もそれにつられてしまう。快楽の拷問吏によって容赦なく挿し込まれる、青紫色の攻撃的な形状をした光沢。――グヂュッッ!! 小振りなお尻が歓喜で跳ね踊る。ランセリィは蛙の断末魔のような無様な嬌声を喉から迸らせた。
「ふぅぁぎゃげああああああぇえぇぇぇぇええええぇぇぇぇっっっ!! ひぃっっ、ひぃぃぃぃぃっっっ、擦りゅゥゥゥゥゥゥヴ!! 落ちろ……っ、この、落ちロぉぉォォッッ!!!」
 それが限界だった。ついに耐えきれなくなった少女は、より最悪の結果を齎すと理解しつつも、悪魔たちを振り落とそうと己の意志で腰振りを始めてしまったのだ。獲物の反撃をそっくりそのまま駆動力に変えて勢いづいた凌辱が、彼女を引き返せない高みへと押し上げていく。
 ――ジュブグギュジュヂッッ!! ブブヂュッッ、ヅググブヂュヂョロ゛ュギュッッ!!!
 愛液に煮込まれて柔らかくなった物、真新しく未だ芯の硬さを失っていない物、計五枚の合奏隊が、荒波の如くうねるベビーピンクの膣粘膜に食いつくと、手近な襞に手当たり次第に毛先を突き刺し、絡みつき、鉤爪で引っ張り伸ばす。刺された所からジンジンと溜まらなく疼き出す恍惚の裁縫針が無数に裏から突き立ったような刺激が女性器を貫いた。
「んぁぁォォオ……!! み゛ゅぎゅ、レ゛エエエ゛ェェェッッ!!」
 コルセットの奥でパチパチと火の粉が舞った。またしても絶頂の予感を嗅ぎ取り、胎の中で今までとは比較にならぬ興奮が膨れ上がる。辛うじてそれを押さえ込んだ拘束着が内から弾けそうだ。
「……ひゅぅぅぅあああ……く……っひ……ぃぃ……!!」
 周囲が一斉に猥褻な腰振りの真似をして無言の歓声と共に囃し立ててくる中、羞恥の業火に焼かれ、ひっくひっくと嗚咽が漏れた。激発は無駄だった。不規則かつ乱雑に暴れる悦楽の伝道師たちは、まるで滝を遡るようにして先端を子宮口にねじ込んでくる始末。
「イ、ヤ……だッ、負けたくない……っ、ま、負けたく、ない……のにぃぃ……っっ!!」
「何本突き込まれても羽根は所詮、羽根。この程度で崩される安い決心だったわねぇ?」
「う゛……う゛……ぅ……!」
 整っていた短髪はそそけ切り、発情臭のする唾液が八重歯に絡みつく。その膣に魔物喰らいが濡らしてもいない羽根ペンを、いきなり二本、ズヌプリッッと突き立てた。
「あお゛おおおお――――――っっっ!! ひゃっ、ひゃっきよりィィいいいっっっう!?」
 痛いほどの歓喜。愛液がたちまち、乾いた羽根に絡みつき、浸潤していく。炙られる焼き魚のように全身からポタポタと脂汗を滴らせる少女は、濡れてべったりと肌に張り付いた衣裳から、幽玄でスリムなボディラインを浮き彫りにして鳴きよがった。
 幼い女性器に幾本も突き刺された羽根ペンが膣壁の蠕動と共に徘徊を続ける無間地獄。
 脊梁を蕩かし煮崩れさせる悦楽のマグマに過負荷をかけられた脳が悲鳴を上げる。未成熟な骨盤が山脈を削る氷河のような逞しい恍惚に責め抜かれ、第二の口腔となってくねる小さな女陰の襞が牝肉の獣脂を垂らしながら、毛先をバラバラにして戻さなくなった菫羽根の群れを粘膜で挟み潰して摩り合わせ、胃液が逆流しそうな快感に酔い痴れる。
「ヒィ――――ヒィィィィ――ック……くぁっ、ぁヒ、ヒギィィイイイィィィィッッ!!」
「ほうぅら、見てご覧なさい? 大層な口を叩いていた自分の感じ具合をねーぇ?」
 束から引き抜かれた一本が顕示された。少女の体温を啜って湯気を立てるソレから、接着剤のように粘ついた真っ白な蜘蛛の巣が糸を引いている。もう一度元通りに刺されると、膣の咀嚼でペン先達が激しく動き回っている所為で、すぐに他の物と区別がつかなくなる。
「くぉぐぉぉ……いやぁぁ……見せ、るなぁぁぁ……かキュぁぁぁぁぁぁっっ!!」
 ランセリィの瞳の焦点が危うい。
「ずぅぅぅぅぅぅっっと、そのままハムハム続けて、耐えきれるぅ? もうこっちのお口は、自分が鳥の餌がお似合いの淫乱な雌豚だって声高に叫んでいるけれど!」
 紅眼を興奮させたゾフィアが股間から突き出た羽根ペンの頭の一つ一つに指先を乗せていく。その途端、乱雑な運動に一つの指向性が齎された。てんでバラバラに動くペン先の書く部分に妖艶に掌を添えて纏めて握られれば、卑猥な意志で統率された穂先達が魔性の虜に堕ちた膣で激しく肉版を刷り上げる。
「ふひあっ、やだっ、やだなのおおおおぉぉぉぉぉっっっ! 止まって……腰……止まれぇぇぇえええっっっ!! はぅっ、んぁぅぅぅぅ……! そこっ、擦れ――ぇ゛――っ!」
「ハァイ、もう少しの辛抱よー、もう直、エンドにしてあげる! 私って、相手が鯨さんになってくれないとイかせた気分にならないの。これもきっちり覚えて貰うわねーぇ!」
 束になって一匹の巨大な毛虫の如く狭隘な女洞で密集した青紫の光沢が、止まらない幼魔の腰に潮を噴かせようと目標を定めて襲いかかる。盛り上がったGスポットの膨隆粘膜を釣り針に引っ掛け質量任せに凹まされると、その天井裏にある空洞――膀胱に不穏な未知の快楽が立ち籠めた。幾本もの濡れ矛のエッジで膣壁の向こう側にある尿道をなぞる動きで擦過され、泌尿器に僅かに溜まっていた臭いのきつい液体が沸騰し、アンモニア臭気の漏れ出た排泄管に何処から滲み出たともつかぬ得体の知れない愛液が満ちていく。
 力を込めて奥を上下に揺すられると、子宮口付近で起きた毛触りの大合唱が響いてきて、まるでもう一本ヴァギナが通っているかのような灼熱の疼きに尿道が噎び泣く。
「っひきっ、くひィぃぃぃぃぃぃっっ! は、はハぁぁぁっ……はじ、め゛てっ、オ……見せ……あ゛、相手っ、ぐらい……選ばせ……て……よ゛……きゅぐぁが……っっ!」
 膣すらも暴発しそうな快感だ。火薬をギチギチに詰め込まれて、ニトログリセリンを流し込まれる様な。女洞の中でそれらが粘りきった愛液と混ざり、コンクリートを掻き混ぜるような重量感で少女の快楽神経を追い詰めて行く。なけなしの軽口が封じ込められる。
「っひぃぃぃぃぃぃぃィィィィィっっ! きゅっぅぅぅううぇあラええエ゛っっ!!」
「そんな権利はお前にないわ。許されるのは命乞い! 靴底に踏み躙られて笑顔を浮かべ、水芸で強者を愉しませて歓心を買おうとするの。鏡の中でしていたのと同じにねーぇ!!」
 凄まじい拒絶心の柱が少女を串刺しにし、肢体を石のように硬く強張らせる。だが、そんな決意も、妖しい侵略の前には用を為さない。瞳を爛々と輝かせるゾフィアの左腕が、ショートスカートの中を杭打ち機の如く何遍も荒々しく衝き上げてきた。肉の試験管を細長い菫色のタワシで執拗に洗われる。つぷつぷと腰が泡立ち、快感で蒸発してしまいそうだ。少女の肢体が飛び魚のように跳ねようとして、拘束の硬い鎖に引き戻された。
「気の強い泣き虫さんは、初めて潮を噴く時にどんな声で鳴くのかしら!?」
「イ゛ヤ゛アアアアアアアアアアアッッッ!!! いやいやいやぁぁぁぁぁぁっっっ!! は――――あ゛っ! 擦らゅあィれぇえええ゛ぇぇぇぇぇぇっっ!!」
 軟体生物のヌメリを持つ牝の気球にも悦楽の拷問具は平等だ。独特の動きをする茶筅の絨毛無尽な掻き毟りに否応なしに充血して体積を増していくGスポットは、羽根刷毛が払っても払っても豊潤な膣液を分泌し、増量スイッチを休み無く押し続けられる女体に内蔵されたスポイトには淫靡な澱汁が吸い上げられ尿道一杯に溢れかえっていく。あまりの濃度に詰まって塞がってしまいそうだ。小指の腹で膣前庭の中央に位置する女の鈴口をグニグニと捏ね回されると、ズクンズクンと狂おしい脈動が肉芽の根元を駆け昇る。
 身体を押し上げる歓喜に衝かれ、喉から飛び出た声――。それは何よりもの敗北の証だった。生意気盛りだった瞳が色欲に濁り、沸騰したアルコール度数の高い蒸留酒をぶちまけられたかのようにカッとヴァギナが炎上する。心の奥底にまで染み入ってくる歓喜に自制を壊され、幼肉のクレバスから蒸気の匂い立つボンド状の愛液がベットリと滴った。
 ――ジュブシッジュチュャッッ! ズッズグズョヂョッッ!
「ゃ――あぁぁぁっっ! 溶きゅッ、頭の中ァ溶きゅッレエェェうううウウウっっっ!!」
 一度箍を外されると、もう止まらない。満腔の歓喜に噎ぶ女陰が次々と本気の牝汁を溢れ出させる。チェロ型の流線を描く腰を爪弾かれて、ドクドクと血が頭に昇っていく。
「は――っ、は――っ! 苦し――ひぃぃぃぃ――いいぃぃ……っっ!」
 胸が危険な化学反応を起こしたかのように激しく上下し、その勢いだけでペンダントが宙に打ち上がった。窒息寸前の小鳥は涙で顔がぐしゃぐしゃで、ゾフィアの掌上で恥部を踊らせる。垂れた蜜を沛雨の如く大粒の土砂降りにして女の腕に撃ち注がせるのだった。
「ならば楽になればいいのよ。慈悲深くそれが許されているのだから簡単なことだわ?!」
 つ、と摘んで顎を上げさせられた顔の直前に正面の鏡が移動して来ていた。玲瓏とした異世界の扉から悪意と嘲笑と、そして淫らな興奮に顔を歪めた鏡精が覗き込んできている。
「あ゛――っ、あ゛――――っっ! あああああぁぁぁぁああああああ――――っっ!!」
 狂わされた本能の命ずるままに身を乗り出した小高い鼻がこつんと鏡面に当たる。ランセは一心不乱に眼前の壁をしゃぶりだした。冷たい鏡面に熱い舌を這わせ、偽りの自分と接吻していく。汚物に口づけるのと同等の行為。なのに覚えるのは興奮だ。ナルシズムにも似た自己陶酔。惨めで自虐的な背徳感。尿道がキュゥッと収斂し、噴出の圧力の高まるラブジュースを奥に封じ込める。
「わ……わたしはぁぁぁっ、シェリスみたいな、マゾじゃないぃぃぃ……っっ!!」
 ちっぽけな舌先からの些細な刺激すら貪欲に味わおうとする肉体に、心が引き摺られる。度重なる凌辱者の手管に心の防壁を剥ぎ取られ、孤軍奮闘を続ける少女は一個の爆弾へと変貌させられていく。紛れもない少女の本人の物である肉の歓びは、永続的に続くこの快楽を享受して歓喜の咆哮をあげていた。
「そうね、もっと酷い性癖がありそうだわ。まずは大嫌いなそれと同じ物体に堕ちなさい? イヤらしい自分を好きになるの!」
「やめ、ぇぇぇえええっっっ……こわれるっ……からだがこわれるぅぅぅ……っっっ!!」
 魔物喰らいの指が七本の筆軸を易占いの筮竹のようにヂュプラヂュプラと掻き回す。泣きじゃくる少女の膣を羽毛のタワシが擦り上げた。凶鳥の掌のお手玉を放り上げて受け止める手付きそのままに凋落した魔少女の肢体が揺さぶられる。
 ――ヂュッチャ、ヂュブツッチャッ、ヂュグッチャァァアアアッッッ!!
容赦なく詰め込まれていく快感の炸薬でパンクしそうな身体を更に、灼熱の渦に叩き込まれる。享楽の淑女の指に操られるミキサーが少女の導火線を急速に短くしていく。
「んぉ゛っぁ、はぁぁぁぁぁぁぁぁっっ! ぁ……ぁ……ひゅ……ゅっ!」
 後頭部で両腕を組まされた少女は、肘で白瑩の角の根元をぎゅっと挟み、ただ腰を振り続けた。四肢を固定され一切の裁量のない肉地獄。ひくついて開閉を繰り返す尿道口が焼け火箸を突っ込まれて掻き回されるような快感に噎び泣く。雫のお玉杓子が一滴漏れる。
「んあ……んかはああぁぁぁぁ……!! ひゅガゥオォオオオォォォォォォッッオ!!」
 限界を超えた頭が強制的にブレーカーを落とし、一切の抵抗をゼロに。昂ぶりきった肉体が理性の軛を脱し無制限に快楽を貪り始めた。身体機能から切り離された意識が淫欲に染め上げられていく。「んぅ゛……!」と舌を鏡に押しつけ、カチンと八重歯をぶつける。
 ――ジュグチッッ、ジュグズチッッ、ジュグブヂュヂュヂュウウウウウウッッッ!!!
 何度も荒波に放られてから、一際高く放り出される感覚。
「な、何か来る――ッ! はぅぅっ、あ゛はう゛ぅぅぅう゛うぅぅぅぅぅっっっ!!」
 切れ長の蒼い瞳が溢れる涙で厚い膜を作って行く。盆の窪が女の肩に押し付けられる。
 ――ジュボォォッヂュヌヌ゛ジャッッッ!!!
(も゛う……っ……無理ぃぃ……限界ぃぃぃぃっっっ!!)
 その口が無音の開閉をし――。
「っああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァッッッ!!!」
 グンッッと膝が角度を狭め、卑濡れ羽に子宮口を押しつけ抉らせた。腰を捻り膣壁を擦り付ける。血走った女洞粘膜に石鹸をたっぷり塗り込めたタオルで摩擦したかのような泡が立つ。炸薬庫に引火――、ヂリッと子宮口にスパークが走り、全身が木っ端微塵に吹き飛ぶ総毛立つ歓喜が爆発する。頭を大きな木槌でドンッと殴られるが如き衝撃がし――、
「キュあラ゛ッッッハヒャアアアアアアアアアアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!! ヒッ、ヒィィィィッッ!! ヒぎゅオオオオオォォォォォォオ゛、ハオ゛オア゛オ゛オオォォォォォォッッッ!!!」
 ダンスしながら少女が昇り詰めた。抽送の度に位置の入れ替わる七本の羽根槍に、肉襞が未発達のぬめった岩窟の奥深く窄まった頚管の縁を嬲られ抉じ開けられ、鉄砲水の如く逆流する愛液を子宮に流し込まれる。子供が引き付けを起こしたように下腹が震えた。
 うなじで導火線が途絶え、ちっぽけな頭蓋が悦楽の閃光で粉々に吹き飛ばされる。
「クキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッッッ!!! るあっ、るあっっ、ゅカァァァァァァりぅヴううううううぅぅぅぅぅぅッッッ!!! ォぐぎゅフうううううぅぅぅッア゛、クるァラあ゛ああアあああああぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
 眼前に広がるのは、汚穢に満ちた偽りの白さ。踏み込んではならぬ禁忌のハレーション。
 ――プビュル……ビュクッ、ビュバァァァァァァァァァアアアアアアッッッ!!!
 緩んだ排泄管から勢いよく潮が噴き出した。溜めに溜めた矢を吐き出すめくるめく恍惚と共に濁った虹のアーチが淫獄に架かり、鏡面にぶつかってアメーバの如く打ち広がる。
(ヒィぃっ、尿道が破裂しちゃいそうだよぉ……お腹の中身が全部出ちゃううっっ!!)
 フリージアの花が饗悶の射精感に散らされ、象牙色の墨汁が通過の際に尿道で跳ね散る刺激にさえ全身が瘧に掛かったかのように震えてしまう。羽根触りの合唱が響き渡り、空腰を使って奔流を外へと送り出す少女はタパタパと秘口から愛液を垂らして床に溜めた。
「ふぁっ、ひゃああぁぁぁぁぁ、イ゛ャぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
 その間にも教え込まれた通りに四肢は動き続け、肉のシリンダーに菫色の剛毛を生やした毛虫を這いずり回らせる。悍ましく柔らかな毒針毛を棒束子と見紛うほど周囲に突き出した潜蟲に、きつい牝の洞窟があらゆる箇所を掘削されて、媚声を道連れに崩壊していった。ヴァギナが灼熱の坩堝と化し、そのうねりに同化して全身の臓器を踊り子のようにくねらせる腰が、ボタッと猫の赤子大の液塊を産み落とす。
 首のすぐ付け根辺りで倦怠感と恍惚とが入り交じり、そこで動脈と静脈が繋がって心臓に戻らなくなってしまった大量の血液が、形のいい頭の中をグルグルと循環し続ける重苦しい錯覚。正気の海面を飛び上がって淫獄の旭光を垣間見る理性が灼け爛れていく。
「はっ、はぁぁ……っっ!! うは……くはぁぁぁぁぁぁ……っっ!!!」
 全身をバイブレーションさせて狂ったように初めての潮吹き絶頂を貪る少女。欲情の生気の乗った淡雪色の裸身に振り切られてずれる、胸から腰までを包む胴ジャンパー・スカート腰一体型のネグリジェ。グレイのカーテンの中で尖った乳首を上に向けた儚い隆起が、汗で吸い付く黒い涙滴型のブラを息苦しげに押しのけたがっていた。すでに足腰が立たなくなる程感じ入っているというのに更に膝立ちを強要されているウエストは限界を超えていて、よがりくねって見えざるフラフープを回している。鉛直上方を向いた羽根に斜めに傾けた膣洞窟の天井のGスポットを激しく擦りつけ、一個の発電機ダイナモと化して初な女の芯を痺れさせていた。
「アッハ、開通おめでとう! お赤飯を炊く代わりに出を良くしてあげるわねーぇ! こりこりな神経密集地ラフレシアの蕾帯を甚振れば、あら不思議、衰え知らずになっちゃった。病みつきになるぐらい癖をつけましょう!?」
 ――ジュプッルボッ……ドピュン!! ヌヂュリ……ピュブバシャアアッ!
 未知の機能へと開眼した女陰に激悦が走り、蟠っていた残尿感が更なる膣圧に呼応してピュッピュッと吐き出された。直に入ってきた長い指に直接Gスポットを揉まれたのだ。
「み゛ぎゅん!! さわ……っ……ふなぁぁぁぁん! イきゅっイきゅにぃぃいっっ!」
 己の意志に背いた断続的な間歇泉に、尿管を楽園への直通トンネルにされ、迸る歓喜に腰砕け。薔薇色に輝く幼い女陰が苦しげに収縮し、育ちきった肉芽がブルッと爆ぜた。
(生暖かい指ぃぃぃ、変な動き方されてる……感じ……るのぉっ!)
 外から見れば、頭の後ろで手を組んで衣裳の脇を覗かせた少女は、鎖骨から下にすっぽりと肌着を摺り落とし、漆黒のブラジャーを覗かせている。
「ふぁぁ……ぁ……ぅぁ……! くぅ……ぅぁ……ふぁぁぁぁぁぁ……っ、ぅぅ……!!」
 数回潮の絵筆を振るい、虚ろかつ幸福そうに焦点を霞ませて、強情な蒼光を湛えていた筈の瞳がトロンと澱む。それは魂を翔ばした者だけが見せ得る弛緩し切った顔だった。
「ぁ……ぁ……ぁぁ…………!」
 くってりと垂れた華奢な体躯が、ふらふらと銀冠をカチューシャ左右に揺らして朦朧とし、甘く粘ついた水飴の如き涎を垂らす。背後に突き立った銀の長剣と共に、長辺のなだらかに窪んだ直角三角形を描いている。今の彼女は倒れることすら許されない。落ちっ放しになっているショーツには愛液が溜り、白濁のオイル海に浮かぶ黒い諸島といった有様になってしまっていた。
 ――す……すご、い……これが……潮を噴く本当の絶頂…………。
 暫くして、散らばっていた自我が少しずつ戻ってきた。
「はぁ……ぁ……ぁっく……」
 腰から下の感覚が失せている。ただ快楽を肉体が受け入れてしまっただけだ。敵に媚びた訳でも、命乞いをした訳でもない。なのに、この敗北感はどうしたことだろう。
「ふふふ、ご満悦のようねーぇ?」
 煩悶していると、後頭部を白手袋ショーティが掴んできて、顔が正面の鏡に押しつけられた。精根尽き果てて気丈の糸がぷっつりと切れてしまっている彼女は、訳も分からぬままに惰性で従い、舌を突き出して「んぅ……ぅ」と透き通った恥辱板に寄り添わせて舐め始める。
「初めてアーチを描いて達した気分はどーぉ? 皆それを知りたがっているわ?」
 ピチャピチャという湿音が鏡面を叩く中、少女の向かいに映った偽物の嘲笑が深くなる。嫌味たっぷりにランセリィと鼻梁の位置を合わせ、頬の横に両手を突いてイヤらしく合わせてくる舌使いに、身体の奥底の燻りを再び引き出されていく。
「ぁ……ふぁァ……っ。……ぃ……ひっ……言うもん、か……ぁぁぁ……」
「まぁ、そういう反応になるかしら? お前は無知で、鈍くさいのだもの」
 意識を必死にかき集める少女に、ヴュゾフィアンカが忍び笑うと――、
「……ぅむぅっ?!」鏡に押しつけた唇に不意にぬっとした物が触れてきた。ランセは首を引こうとしたが、叶わない。気がつけば、向かい側の淫蕩な自分がこちら側に身を乗り出してきている。紛れもない実体となった手首を湖の表面のように波紋を広げる鏡から突き出して、自由の効かないオリジナルの頬を挟んで桜色の花弁を奪ってきていたのだった。
「ふぁぁっ、は、はなっ、ひぇっ!」只でさえ煮立った頭が酸素不足で熱を孕み――。
 ――面白い能力をコピーさせてもらっちゃタァ♪
「――ッ!!」そして朧気な視界の中で少女は見た。周囲のランセを模した邪鏡精たちが自分に薬指を向けるのを。きっとそれは知識を吸収するのではない、注入するため――。
 ――ドプッ、ドプッ、ドププッッ!! 環指が突き立てられた。薄い胸に、絶息する喉に、角の根元に、弾む腰に、眩い太腿に、柔らかな脹ら脛に。革靴を貫通して足の裏にさえ。
「む゛、ふむ゛うううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――――ッッッ!!」
 くぐもった声を漏らし、密着した己の唇で強くドッペルゲンガーの唇を噛む。すると、水の中から見上げたように揺らぐ視界の中で意地悪な写し身の蒼眼が、残酷無比な愛嬌を振り撒きながら釣り上がって見せてきた。
『――堕ちるんだよ、性奴隷に相応しく。お母さんの世話はわたしが引き継ぐからさ!』
(や――頭の中に入ってくる……!)
 シェリスエルネスの知識を吸い取った時と同じ感覚。絶頂で真っ白になっている頭に 強制的に卑猥な情報を転写される筆舌に尽くしがたい感覚がし――、
「ふぎゅぅっム……! み゛ゃぐううううぅぅぅむっぅぅぅうぅぅっっっ!! ぷはぁっ! わたしはヤラシイ雌豚犬猫です――!! もっとプッシーに餌頂戴ぃぃぃ!」
 到底自分の物とは思い難い卑語が口を衝いて出た。
「女の子だもの、傷痕は残さないでおいてあげるわねーぇ?」
 ゾフィアの鴉翼がランセリィの肢体をさっと撫でる。すると、用の済んだ黒い孔が肌から痕跡を残さず消えていく。しかし、どす黒い負の情念に汚された魂が癒える訳ではない。
(やだ、頭の中でヤラシイ言葉がぐるぐる回ってる――! 嫌なのに……許せないのに……っ、恥ずかしいこと一杯考えるの、気持ちいいよぉぉぉぉぉ!!)
「もう一度聞くわぁ。私の手管技巧のお味は如何だったかしら?」
 伏しそうになった耳を撫でてくる瀟洒な白手袋を首を捻って振り払い、剣呑な気配を感じて周囲を見回した少女は、この快楽地獄の計り知れない深淵を垣間見て、慄然たる衝動に全身の産毛を逆立てた。鏡像の拷問吏たちがそれぞれ一本ずつ、ランセリィが膣に突き込まれているのと同様の羽根ペンを握っている。そして自分たちの愛液で適度に濡らしながら、その拷問具の効力を発揮させるのを今か今かと待ち焦がれていた。
 ――応用練習のお時間だい、清純ぶったお嬢ちゃン! 教えた言葉を利口に使って、具合を聞かせておくれヨぅ! 上品マ○コの昇る感覚なんて、あたいら分からな〜いっ。
 ――決まってるじゃ〜ン、ジャムメーカーが破裂しちゃうぐらいヨくて、子宮口開きっぱなし、梨色の牝汁が駄々漏れなんだっテ! 淫乱仲間なんだから感覚だって同じサァ!
 ――ねえねエっ、この身体で潮噴きってどんな感じ、どんな感ジぃ?! 出す時お尻の穴をグリグリッてしたら、もっと気持ち良さソ?!
「ど…ぉ…どうして……そんなこと……言わなきゃならないの……っ! ッ――ひがああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!! ひぐぁがあああぁぁぁぁぁぁあああああああああっっっ!!!」
 ――ズブズブズブブズッッッ!! 凌辱者たちのお気に召さない返答をした愚か者に、数えるのも馬鹿らしいくらい大量の羽根ペンが突き込まれた。
「……ィィィ……ッ……ん……!! ふく……ぅぅぅゥゥ……ッッッ!!」
「言わないと、もっと羽根ペンを増やすわよぉ?」
「ァ、ガァァァッッ、――――――ひ……ひわないぃぃっっっ!!!」
 ――ドスッ、ドスッッ、ヌ゛ュブュルッボョヂュッッッ!!!
「フ――――ッ、あぎゃファオ゛オオオオオオオオオォォォォォォォォォォッッッ!!」
 雪崩打つ暴虐から庇おうと、ランセリィがへっぴり腰で後ろに向けた陰阜の割れ目へと、背後の真打ちが魔法使いの鮮やかさで二本、ヴァギナを虐め抜く為の拷問具を指先に生み出した。逆さにされて羽毛の方を先端にされたダーツが零距離から振りかぶられ、そしてソフトボールのアンダースローじみた手付きで突き刺される。
「お利口になりなさい? 愛嬌のある所を見せてくれないと……ぉ!」
「ヒィ――――ィッッ!! ヒュギィィィィイイイ――――――ッッッ!!! もう、やあ゛ぁぁぁぁぁっっ!! もうい゛や゛あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
 永続的に嗤う受動搾悦器の山盛りを慣れない秘苑を精一杯開かせて呑み込んだ幼い女洞の牝肉が、縫合され包帯を巻かれた切開手術の傷痕が治癒に蠢くが如くジュクジュクと熱を持ち、気も狂わんばかりの痛痒で嬲ってくる。
 湧き上がる快楽の大合唱に全身でしゃっくりをあげる少女。陰阜から生えた無数のペン先に手套の指が絡みつき、肉筒の中で再び気の触れそうな抽送ピストンを始める。毒々しい桜色の靄に思考の経絡が侵されていく。積み上げられるだけ積み上げた防壁を全て破壊された彼女にもう抗う術はなかった。邪鏡精らによる真っ赤に紅潮した喉に殺到する擽りと、尖りの痙攣する耳介に押し寄せてきた甘い吐息に促されるままに正直に答えさせられていく。
「わかん、ない……わか……ん、ない……っ……頭の中が真っ白になって……脚、閉じさせてぇぇぇっっ、恥ずかしいぃいいぃぃぃぃっっっ!」
 その瞬間、彼女の存在は堕落を憎む潔癖な糾弾者から、出来の悪い新参者へと転落した。
「呆れた物ね、知ったかぶっていたなんて。お仕置きに一から仕込んであげるわ?」
 頭が真っ白になった子供に卑語を教え込む事は豆腐を崩すよりも容易い。まずは発声練習だ。窄まった菊門や渦巻く耳殻に押し入ってきた媚教師達の舌と唇が、あーうーと淫音を注いで若肌を悶えさせる。赤子の舌を指で動かして言葉を覚えさせるようなものだった。
 ――ァム、プァチュムッ、ここまでしてあげてるのに言わないか、言わないカぁ♪
 ――悪い子だっ、悪い子だぁ、お仕置きっ、お仕置キ!
 脳に描いたダンスの軌跡と四肢の振りが一致すると恍惚が襲ってくる。舌の根元が調教とリンクさせられ、『本来の自分』が解放されていく。淫乱な理想像に身を委ねる喜びが、僅か二日にも満たない魔少女の生涯を蹂躙し尽くした。
「ヒィ……ッ! らしっ、おもらし、ひゃいこむっ、らったぁ! のに、おひり足りなかったよぉ! ひゃっく、みぃ、ぷりいぃず あすほぉぉるっ ひゅきぃぃぃいっっ!」
「こぉされると、とっても熱くなっちゃのよね?」
 ドレスを半脱ぎの状態で完全に引け腰になった開脚姿勢の付け根、恥液を電飾の如く纏った生きたもみの木が巨体をねじ折り、膣孔を穿つ。すると少女の寸法の小さい胴体が、まるで巨人に握り締められたかのようにビクビクと痙攣。
「ふ――――ッ゛ッ゛、んおおおおおおおおっっっ!! そ、そう、熱い!」
 混沌とした思考が誘導されていく。唆されるままに魔少女は肉の猛りを口にする。
「イイ゛――ッッ!! もっとスジを捲って塞いでぇぇっ! ファック・ミー・プリーズッ! トロロ汁止まらないナメコま○こを潰して戻らなくしてぇぇぇっっ! にゅルっ、ひゅニュるう! って、は……ハめ、ハめまクってぇぇぇェェッッッ!!」
「これがトロロぉ? 少し控えめに言い過ぎじゃなーい? 和洋折衷もいいけれ、ど!」
 懸命に姿勢を維持し続ける漆黒のオーバーニーを履いた脹ら脛や腿に抱きついた数人が巧みな指圧で下半身を疼かせる。ランセが脱力して腰をストンと落としてしまうと、複数伸びた腕が椅子となって支えてきて、淫語洗礼の羞恥で紅葉のように染まったお尻の柔肉を、そこだけを徹底的に揉みしだいてきた。全身に媚薬感の塩を揉み込まれ愛撫される。
「おしり……おひり……ピーチ・ボール見てぇぇぇ……熟れたトマトだよぉぉ、剥いてペニスのマッシャーでぐちゃぐちゃに潰ひて! スペルマ浴びせりぇえ……っっ!」
 遂に頑固者に対する実力行使に及んだ歪んだ鏡像たちの催す肉の宴の中で、オリジナルたる魔属の暴君は無惨に堕ちていった。
「Oh yeah! Raise a gallop,アッハ、ヤる気満々ねーぇ! GUY! Open C? A? Fuck me前と後ろ、どっちにするぅ? please! なんちゃって! ノリが悪いわ、ランセリィ! それにそういうのはねぇ、戦ってるシェリスを放っておいて、イヤらしく貪欲に快楽に夢中になってますって言うのよ?」
「うぁぁ、違うもんっ、ん、んふぅぅぅぅっっ、ふむうぅぅぅぅぁぁぁぁっん!! わぁっ、わたし……っ……違う……! そ、そこ、らゃめっ、脇の下、指で押さないれぇっ!」
 自分たちの身体をも愛撫しながら、悪夢の使徒たちがランセを愛撫する。ここだよ、ここが感じるんだよ、と身体に教え魔少女を淫靡な泥沼に引き摺り込もうとする。想像だにしなかった箇所を性感帯へと変貌させられていく欲情の魔手は、哀れな小娘を軽いパニックに陥れた。一人が柔らかな内腿に掌を添えて五指を巧みに操って性感帯を探りながら摩ってくると、無数の自分が同じ指使いで全身を弄ってきた。
「い、いまはやめて……っ、肌がビリビリしてるの……ぉ! ゅあ――ぁぁぁぁぁぁ――こ、コォぉぉしっ、掴まれるとぉぉぉォォ、蛇っ、太い蛇が身体の中にいるみたいでえええっっ!! 揺らさ、ないでっ! はね……お腹の中のはねがあああぁぁぁっっっ!!」
 神輿の如く担ぎ上げられ肢体の表面を無垢な掌で撫で回されると、それを待ちかねていた肌が沸き立ち、まるで自身が避雷針と化したかのように悦楽の電撃を総身に集めて噎び泣かされる。総崩れになった理性に追い打ちを掛けるように菫色の羽根に女洞粘膜を擽られて、後から後から愛液が滴って止まらない。
 ――ジュッチュ、グッチュッ……ヂュリヂュリヂュリ゛ッッ!!
 頭の蒸気機関車に悦楽の石炭がくべられ、周囲に充満する少女たちの甘酸っぱい馥郁たる吐息に、唯一そぐわない荒々しい煙突の噴煙の如き嬌声が混じる。
「擦ラ゛ァァァアァァッッッ!! 身体が芯まで痺れて弾けるの、お腹が弾けるの!! あそこが泣いてるのぉぉぉ! ぅぁぁ、貪……っ、かいら……くっ、貪欲にィ……ッ!」
「またイっちゃうのかしらー?」
「分からないよ……ぉ! ま、また頭の中に何か詰まってくる……! 弾け……イク……イク……! くぁ……ふぁ……じゅけぇぇぇぇ……っっ!」
「三回目なら少しはゆっくり味わえるでしょう。一度イってからだと、敏感過ぎて気が狂っちゃうかもしれないけどねーぇ!!」
「ひぃぃぃぃぃぃっっ、いやあああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!! ヒィッ! ヒィァアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
 ランセリィとの性闘争に勝利した喜悦具は酷使の果てに乱れ切り、一部が反り返って釣り針を複数寄り合わせたような、まずます凶悪な形状に進化していた。ギチギチに羽根の詰まった淫猥なタンポンを、ぐっ、と押し上げられ、子宮口に骨の枝張りも露わになった毛先を潜り込まされる。小指の幅程度の孔が迸った電撃の縁取りをされて悶え狂う。網膜と脳細胞に激しいスパークが散り、口の詰まったホースのように出鱈目に暴れようとした四肢が拘束と凌辱者たちに押さえ付けられた。丹田から込み上げた歓喜の爆発のはけ口を求めて、黒銀の魔少女は遠吠えを放ちながら、撥ねた襟髪を狂乱させる。
「アオおおおおおおおおおォおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!」
「愛しいわ、ランセリィ。負けの見えた戦いでそんなに足掻いてくれるなんてねぇ?」
(わたし……掌の上で弄ばれてる……こいつより弱いぃぃぃ……っっ!)
 強くなろうと誓った。
 意地を張ろうと決めた。
 今、その決意の全てが、肉の怒濤の前に瓦解していた。
 少女の心に入った諦念の罅を引き裂いて、壮絶な喜悦の波動が噴き上がる。
「ォ……ォオオオオ……イ゛、ぐぅぅぅゥゥ……くひゃああああぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっっっ!!! ぁっ、ぁふ、かはぁあ゛あぁぁぁう゛ぅぅぅぅぅぅおおおおおおおぅっっっ!!!」
 稚魚のような魔翼が、群がった鏡精少女たちの八重歯に甘噛みされ、撫で摩られた。
「ひ、ひぃぃぃぃっん! 羽、嫌ぁぁぁっっ! 筋ぃっ、撫でられると背中が疼い……っ、ひぁっ、膜もヒリヒリしてぇぇぇぇっっ! 変らよぉぉぉぉっっっ!!」
 一言一言が馬車の鞭だった。恥知らずな告白に興奮を高められて嘶く少女。昇るように身体が軽くなっていく。同時に奈落の坂を駆け下ろされる疾走感。何かに掴まっていないと、細胞単位でばらばらに分解されてしまいそうだ。
「人によってはこの先を『死ぬ』って表現するのよー? 私に何度も殺される気分は如何ーぁ?!」
「悔しいっっ、くやしいいいいいいっっ! もう耐えられないっっ! もう耐えられないいいいいいいいぃぃぃぃぃぃっっっ!!」
 陥落の撃鉄を落とされたランセリィは遂に陰阜を自らの意志でゾフィアの左掌に押しつけグリグリと回してしまった。自らに課した重しをかなぐり捨てた瞬間、多大な幸福感が雪崩打ってくる。それは今宵の最高潮。ラビアのスタンプを押すかのように腰を上下に激しく振りたてる少女は、風圧でスカートを華やかに広げながら被虐の坂を転がり落ちる。
「だ……め……! 墜ち……」
 言葉は最後まで口に出来なかった。四度目の絶頂は最早、手慣れた物となり――、
 ――ヂュピッ! プチャァァ……ッ……ヂュバァァァァアアアッッッシャアアアア!!!
 小さな身体の一体何処にこんなに溜め込んでいたのかと思うほど大量の真っ白な愛液が尿道口から噴射される。嵐の乱気流に揉まれる壊れた風見鶏が左右に角を振りたくった。
「ッ、ぁ……ァァ゛……あみ゛ゃああああぁあああァあああああああッッッ!!! ひやああぁぁぁぁぁ……っっ、っく……ぃん……ぃぁ……ア゛、ア゛ァァア……!!」
 己への誓約の淪落と共に頭の中が溶解し、ドロリと視界が崩れた。明らかに今までと違った、よがり盛った牝声が出てしまう。焦点の定まらぬ瞳を目標も無く泳がせ、無自覚に口を衝いて出る譫言を続けていると今度は、やおら角と短髪を鷲掴みにして顔を向けさせてきたゾフィアに唇を奪われた。上端を揃えた紅瞳が酷薄なまでの慈愛を満たしながら細まって見せてくる。蒼い瞳を覆い尽くした涙と熱で、覗き込んでくる陵辱者の嘲笑が歪んだ。それはまるで、悦虐に満ちた昏い井戸の中に墜落するのを満月を背にして縁から見下ろされているような感覚だった。
 既に固形物ではなく灼熱の塊として知覚している羽根棒で腹腔をブラッシングされ、間断なく襲ってくるのは脳が麻痺するほど重く生温い法悦。お腹が独立した別の生き物の如く波打ち、窪んだ臍が強烈な快感の突き込みに喘ぐ。旋毛――頭頂でピンと跳ねた活発な髪の根元――から熔けた鉛を流し込まれるような心蕩ける疲労感が爪先にまで垂れていく。
「ぉ……ォ……ぉぉぅ……っふ……あはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………!! はぁ、はァん……っ!! お――お――! オオオォォォォッッン!!!」
 すっかり柔らかくなってしまった肢体をくねらせて、歳幼い魔属は腰の幼牡丹を振り乱した。腕の群れに胴上げされるようにして、ゾフィアに恥態の全てを晒す。身も心もグズグズに蕩け、弛緩した幼い女体を汚穢に濁った眩い黄色のサフラン・イエロー恍惚が染め上げる。
「あ――は――ぁぁぁ!! ひん……っ……でるぅぅぅぅ……わ、ラァ……ころひゃれぇぇぇぇぇぇてふよぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!! くぁキィィィィイイイイイイイイッッッ!!!」
 墜ちるのに昇っている。そんな相反する感覚が彼女の意識を分裂させた。ある部分は少女たちに抓られた乳首の悦楽と共に砕け散り、ある部分は羽根ペンの抽送に巻き込まれたまま快楽の虜になって戻ってこない。少女の魂は全身を苛む烈火の抽送と愛撫の牢獄に細断されて幽閉され、凌辱の悪鬼たちにしゃぶり尽くされた。
「あ――ひぃ……ひやぁア゛ぁぁぁ……っっっ……ぇ……はァぁぁぁぁ……――はォんっっ?! あ゛っ、ア゛っ、ああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」
 ネグリジェとパフをずらされ、床の放つ燐光の中でぼんやりと浮かび上がる裸身の胸像。なだらかな胸を汗で濡らして白輝の綾に満ちている。猥雑な熱狂に漬け込まれた漆黒のオーバー・ドレスは淫宴の中でますます妖しさを増し、見る者を惹き寄せる艶を放つ。
「ィ……ィィィッッん!! お腹の中ァァァ……擦りゃレェェェ……ッッ……ひン、じゃ……てるぅぅぅぅ……イくっ、ひぬっ、イくぅぅぅぅぅぉぉぉおぉォひぬぅぅぅぅぅぅっっっ!! イくひヌイくヒぬっっ、イひくぬぅぅぅううう゛ぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!」
 大部分を肌に直接触れさせているジャンパー・スカート状のネグリジェは未成熟な牝汗を啜って気怠げで頽廃的な色気を醸し出し、蜉蝣の薄羽のように儚い灰華をアッシュ・フリル黒薔薇の如き造形を醸し出オーバードレスすミニスカートの開いた前から幻惑的に覗かせていた。
「だらしないくらい素直になったお口にご褒美をあげるぅ?」
 ――グニ゛ッッ!!
 盛んに振り立てられる膣前庭にヴュゾフィアンカの右人差し指と親指が追い縋り、輪切りレモンを潰して果汁を迸らせるような指付きで尿道口を左右から挟み潰す。
「ファぁぁあああああっっにゃあぁぁぁああああああ――――っっっ!?」
 ――ドピュゥゥゥゥゥウウウウウッッッ!!! ビュビュッビュルクッドピュッッゥゥ!!
 噴射口を塞がれた潮の勢いが隙間の空けられた上へと向かい、真珠色の噴水となって飛沫上がった。叩き折られた鼻っ柱に直撃し、無防備に喘いでいた口腔や鼻腔に雪崩を打って飛び込む。潮噴き奴隷のはしたない酸味が味覚と嗅覚に充満、
「ギギギイイイイイイイ――――――ッッッ!!! ごひょうびぃぃぃっ、ありがひょうごりゃいみゃふうううううっっっ!! おいひっ、おいひぃいっ! うれひぃよぉぉ……っ!」
 追い込まれた少女の浮かべる最後の湮笑が白濁のクリスタル・カーテンに隠れながら崩壊していく。頤を撫でる粗相の液量と粘り気に惚け、尾っぽを振った舌が舐め掬った。
 弓なりに仰け反った膝立ちの躯が微弱な電流を流された蛙の死体の如く四肢を痙攣させる。開脚した太腿は膝上丈の漆黒のニーソから死蝶の如き妖艶な白艶を見せつけ、ヴァギナからは滝が滂沱と滴り流れた。流せる限り、最後の一滴まで絞り出されるかのように。
「ふぁ、ぁぁぁ、わたしの中……ドロドロォォォ……ッッ!」
 自分を徹底的に破壊され尽くす愉悦。魂に刻まれた深い屈辱と共に、少女は反り上がっていた肢体から力を抜いた。崩れ落ちる所を、まるで生者の温もりを求める亡者の群れの如く伸びてきた無数の掌のクッションに受け止められる。
「くお……くおぉぉぉォォォ……! ぁ、ぁ……ふぁっ……オ……ッ!」
 断続的な嬌声を上げながら全身の毛穴から緩んだ汗を垂れ流す。その様はまるで凌辱者の耳目を愉しませる愛玩人形。落ち着いていく姿もどこか発条が切れる所を彷彿とさせた。
「う、ぅぅう……」
 ジンジンと腰が痺れる。底無し沼に引きずり込まれるような、どこまでも沈んで落ちていくような、悦楽の倦怠感。漸くもったいつけて尊厳を解放された時、少女は日向で微睡む猫もかくやという蕩けた顔で、忘我の淵をたゆたっていた。
「今の状態を言ってご覧なさい?」
「き……きもち……いひ……ひおをふくにょの、りゃいもひゃもぉぉぉ…………」
 後から後から湧いて出る唾を飲み込み、少女が空腰を振る。浜辺を砕く津波の如く襲ってきた陵辱で真っ赤に茹だった肢体を、小型の羽根箒たちに弄ばれる。卑猥な教導者に黒衣から滲み出た汗で淫らに濡れた湯気立つ手を見せられて、可憐な羞恥で頬が染まった。
「可愛いわねーぇ。相手の勢いに負けた成り行きじゃない、本心から今みたいに屈服できるまで……、殺してあげるわぁ、ランセリィ、何遍も何遍も!!」
 深い官能で奥まで痺れて身体が上手く動かせず、「う……っぅぅ……」と呻き、淫牢のソファーに深く腰を沈めたまま煩悶する少女。クスリと艶笑を浮かべた淑女が被せてきた掌にうなじをあやされて、「あ……」とペットのように身を震わせてしまう。絶頂で酩酊状態にある所を、まるで新入りをやっかむような古株たちの執拗な愛撫に甚振られて、力なくヘドロの中で藻掻かされた。
 漸く拘束から解放されたランセリィは、ドンと背中を押されて突っ伏す。
「ほぅら、自由になれた。反撃してきていいわよぉ?」
「は……はぁう……はん……はんぅぅ……!」
 だがしかし長時間姿勢を固定され続けた肉体は、すっかりガチガチに固まっていて直ぐに機能を取り戻す筈もない。それどころか基本的な生体プログラムすら媚獄のプラネタリウムで破壊された四肢は、身の使い方を忘れて奇妙な卍を描き地上の平泳ぎを繰り返す。
 ――懲りたかいお嬢ちゃンっ。もう綺麗な身体には戻れないヨぅ! これからは、あたいたちと共同生活するんだヨぅ!
「ひ――――ひぁっ!!」
 邪鏡精たちの羽根ペンに全身をさっと撫でられて、肢体を恍惚が襲った。途端、快楽に感電することこそが本来あるべき姿だとでも主張するかのように、乱雑だった躯の動きが統一性を取り戻す。関節や筋肉が自在に解れて性の刺激に花咲いていく。半脱ぎの肌をギザギザの縁で梳かれると、まるで糸を振り回される操り人形の如く壊れていた少女が、次々と繰り糸を断ち切られて脱力し、口元を押さえたランセは胎児のように丸まって狂おしく内股を擦り合わせた。その様はパズルのピースがぴたりと嵌る様を彷彿とさせる。
「あららぁ、折角チャンスをあげたのに、自分が救いがたい淫乱だと行動で白状してしまったわねぇ。クフフ、なぁに、そのザマは! おしゃぶりはここには無いのだけど!!」
 不吉な微笑みを湛えて立ち上がったゾフィアが離れていく。昂ぶりが一向に引かない。
「ハァ゛ァァァ……ハァァ゛ァァァァァ……ッッ!」
 ――まだ……足りないィィィ……。
 幾度となく達したというのに、そんな漠然とした飢えがますます体内で膨れ上がっていた。瞼の下を快感で赤く腫らし、何かを探すように青紫のゴシックドレスを嘗め回した奴隷は、ある一点で視線を止め、自分が何を求めているか悟って栗蜜色の恐怖に打ち震えた。
「ハァイ、お肉のビスケットをご所望? 光栄だわぁ、『三千世界最強の魔性の美少女』のそんな物欲しそうな顔を見せて貰えて。それとも、ぶっとい黒パンの方が良いかしら」
「ぃゃぁ……」
 つ、と爪先立って寄ってきた淑女に上から覗き込まれた時の、己の蚊の鳴くような声に彼女は驚いた。操られてのことではない。つまりこれは、如実に現在の自分の状態を物語っているのだ。(欲しい。欲しい。ホシイ)。曾ては拒めた物を肉体が切実に求めている。
「あげてもいいけれどーぉ。ねぇ、教えたはずよねぇ? こういう時はどうするの?」
 膝を崩して座った菫の淑女が、ポンポンと腿を叩いた。腰の後ろから横腹を通って腹部を這った緑鱗の毒蛇が鎌首を擡げ、瞼を両脇に控えさせた平らな眉間を上へと差し出し、お手を求めるように瀟洒な太腿の間で頭部を屹立させる。
 男根に見立てられたそれに――、
「あ……あぅ……」
 狂わされた少女の肉体は敏感に反応する。ゴルフドライバーの先端状になって待ち構える、ボウリングピンの持ち手形の物体を見るだけで下腹部が疼く。自分からヴァギナの羽根ペンを喰い締めるようにして、少女は四肢に力を込めた。荒ぶる欲求に逆らえない。どうすれば良いのか、躾けはとうに済んでいた。今や淫靡の大書庫と化した頭を浅ましい欲望が性急に引き回し散らかし、がっつきながら一つの行動を選び出す。
「これは……操られてるだけ……そうされたから、そうにゃってるだけぇぇぇ……」
「上手い言い訳ねーぇ! だけど私は淫らな行動を刷り込んだだけ。やっているのは自分自身よ。他ならぬお前の肉体が欲しているからこそ、そんなに短兵急に事が起きるの!」
 クスクスと周囲から押さえた嘲笑が沸き上がる中、ふらふらと腰が浮き上がる。両膝を突き、両手首を囚人の如く腰の後ろに重ねて並べた、屈従を示す恭順ポーズ。身体の感覚が皮膚一枚ずれたような、自分の身体が他人に乗っ取られたような感覚。乱れた衣裳も直せず結局膝立ちに戻らされた少女は、自分の流した汗や愛液をニーソックスの膝で塗り広げながら、吸い寄せられるが如くエメラルドの悪魔の棍棒にいざり寄っていく。まるで袴を穿いた時代劇の奉行が罪人に詰め寄るように。立場こそ逆であるが。
「う……うぅ……お、ぉぉぉっ、お前なんかに……お前なんかに……こんな格好ぉ……! こんっ……ナ……かっこ……ぉぉっ! っぎ、っぎいいぃぃぃぃぃっっ!」
「すぅぐに抵抗する気なんて失せるわぁ。心が肉に従うようになる……!」
 堕落の操り糸に要求されるがままに、緩やかに微笑む陵辱者の前に引き出されたランセは、そして水を飲む獣の如く頭を下げていった。
「あ……あ……」
 半開きの唇が誘惑の蛇に近づいていく。喉がゴクリと唾を飲み込み、胸が速鐘の如く鳴る。早くも咽頭が熱を孕み、どこでもいいから突いて欲しくて堪らない。他人に乗り移って動きを見ているような浮遊感の中で最後の抵抗と、蛇頭のルビーじみた紅眼と暫し睨み合ったが、あえなくヴュゾフィアンカの分身に接吻させられてしまった。
(う……鱗が、硬い……凄いな、わたし……初めての時、こんなのに犯されたんだ……。……こんなのが……ま、またわたしの中に入る……ッ!?)
 征服されていく。凶暴な破壊力を前にして魔悦に魅入られ気概が萎まされていく。八重歯が緑鱗の表面を擦り、精一杯開いた桜色の唇が、蛇を頭から呑み込んでいった。
「街に行くことがあったら気をつけてねぇ? 太い物は全部呑み込みたくなる筈だから」
 チロリと舌を出した蛇が味蕾を擽ってきた。濃度の高い唾液の分泌が増す。肢体を駆けた快感の漣に銛状に尖った悪魔尻尾が突き動かされる。少女の臀部を降ってミニスカートの内腿の間に潜り込んだそれは、両翼を筆軸の中に差し入れて淫欲に浸ってしまった。返しが羽根ペンを内部で引っ掛け、僅かな動きを何倍にも増幅された腰が痺れる。
「んちゅ……ぅぷちゃ……んれろ……ぉ……ぉ……ぉふ……っ!」
 組んだ腕を腰裏に押しつけ、支配者の気を惹きたがって極度に背筋を反らす。小さな顎や頬にかかった黒髪を滑らかな剛直の根元に添え、船を漕ぐように頭を上下させた。
「ふぉ……ぉぁ……んちゅ……、むぁ……はム゛ぅぅぅ……っっっ!!」
 怏々と性に鬱屈した舌を懸命に絡め、流汗滴る頤を限界まで開いて強引なストローク。露わに尖った先端乳首を享楽の淑女の膝に擦り付けてファックをねだる。突き上がったヒップもハの字を描いて開いた脹ら脛も、挿入を待ち焦がれて微細な痙攣を繰り返していた。
「見てみなさい、お前の姿」
 言われて、横目で隣の鏡を見てみると――。
(な、んでッ、こんな時だけ忠実に……ッ!)
 ご主人様の機嫌を伺うかのように飛ぶ意欲を失った蝙蝠翼を伏せて、早熟なフェラチオに溺れ、己の黒尾を幼げな女陰に突き込んで自慰に耽っている姿。自身の作品とも言える恥辱に塗れた少女の姿に舌なめずりをする女が銀のカチューシャを撫でてくる。
「ぅふふ、これでお前を初めて達させたのも私、恥ずかしいことを一杯言わせたのも私!! お口の初めてだって、たった今、頂いているわ。次は何の初めてを貰おうかしらー? 心の初めてなんていいわねーぇっ!」
「こ……ここ、ろ……ぉ?」
 何か大事なことを言われた気がして、緑鱗の隙間から滲み出る野性味の鮮烈な粘液をリップクリームにした唇が奉仕対象に歯を当てながら、猥駆統制から外れて僅かに疑問の形を作った。最早陥落の急降下を止める手立てはないかに見えた少女の精神が、絶壁の途中で枝に引っかかる。
 そんな事は意に介さず、ヴュゾフィアンカがアホ毛ごと頭を鷲掴みにして、軽く持ち上げては深々と押し込み、思う存分ディープな口淫を仕込んできた。喉奥まで貫かれ興奮が頂点に達し、自然と頬を窄めて、ちゅうちゅうと縦笛を吸い始めてしまう。咽頭にヘビ舌でサークルを描き、獲物をたっぷりと鳴かせて満足した淑女が、雄牛型の角の根元を右手で持ってランセをクレーンの如く吊り上げた。淫らな命令を果たせなくなって身悶えた魔少女を正面から左腕一本で抱き締め、互いの右頬を擦り付けながら歓喜に打ち震える。
「ああ、なんて可愛い忠誠心。思いが通じる瞬間って、どうしてこんなに素晴らしいのかしら! ほぅら、仲良く記念撮影しましょう。見なさ――ん?」
 そして、散々嬲るのに使ってきた正面の鏡に自分たちの姿を映して眺めようとした陵辱者の表情が翳った。いつのまにか、その中で立場が逆転している。ゾフィアがランセリィに抱き締められ、魔少女の影から溢れ出した触手で陵辱されているのだ。
「まっ、まぁぁ……っ、周りを見てみろ、ヴュゾフィアンカァァァ……!!」
「や〜ぁよっ、目を逸らした隙に何をされるか分からないもの――――っ?!」
 そう答えつつ素早くちらりと周囲に気を配った銀髪鴉翼の魔女の瞳が、愉悦混じりから一転、剣呑に鋭く尖らされた。それまでおとなしく享楽と猛毒の淑女に従っていたお禿の邪鏡精たちが、ニタリと悪意に満ちた笑みを浮かべている。いつの間にか羽根ペンの代わりに一振り携えていた長剣を逆手に握り、スキーのストックよろしく振りかぶっていた。
「……ぐっ!!」
 両腕を獲物の身体を押さえることに使っていた彼女は反応が遅れる。ザグザグザグッッと、楽しみに夢中になって警戒を怠っていた背中に銀の鋒鋩が突き立てられる。
「か、鏡だろうが何だろうが、絶対に捻じ曲げられないわたしの本性を教えてやる……っ! 月光の幻焔は誰の物にもならない……!! そんな物の写し身になったから、そいつらも狂ったんだ!」
 幾本も胸から金属板の杭を生やすゾフィア。ランセリィの言葉を肯定するようにドッペルゲンガーたちがタイミングを合わせて、それを引き抜き、もう一度――。
 ――グサグサグサグサッッッ!!
「…………ぐぅぅっ、アガ……ッッ!!!」
 ガバァッ、と血を吐いた淑女を全身を使った体当たりで突き飛ばし、ふらふらと立ち上がった少女の右革靴が、タッン、と決死の覚悟で床を打ち叩いた。憎悪に沸き立つ昏い魔影から鯱肌の触手が溢れ出し、腿まで覆って漆黒の奇怪なブーツを形作る。膝の脇に飛び出したスコップ・ガード、鈍重そうな蹄鉄型の踵、角と見紛うばかりの野太い鉤爪。底に鋲打ちのスパイクが付いたサウルス・グリーブ。優に自分の重量の十倍を超すハンマーを装着した右脚をもう一度振り上げ、恨み積み重なる陵辱者の頭部へ目掛けて叩き墜とす。
 ――ゴガッッ!! 足裏に硬い頭蓋骨の感触。土踏まずを軸に、ぐりぐりと踏み躙る。
「死ね……っっ……死ねぇぇぇっっっ!!!」
 だが――。
「――お、す、わ、り……」
 全身を青い血に染め這い蹲らされた女の脚甲底に隠れた貌が、米神を棘に抉られながらクスリと笑い、垣間見える唇から言霊を紡いだ。それにニーソックスを撫でられた途端、猛威を見せていた竜臑が迫力を失い、留め金の外れたコンパスの如くぐらりとよろめく。
「く……ぁ……?!」
「おすわり、よ。聞こえなかったかしらーぁ! その恩知らずのヴァギナにきついお仕置きをするから、もっとよく見えるように、狼の待つベッドへ近づけなさい?」
 剥き出しのままだった恥丘が、緩んだ攻撃の手からするりと抜け出して身を起こそうとする紅眼に見つめられて、じゅぅぅぅんっ、と濡れた。暗示快楽のホイッスルを吹かれた肢体が、羽根ペンをまだ入れっぱなしであったことを思い出す。刺された所からジンジンと堪らなく疼き出す恍惚の裁縫針を、無数に裏から突き立てられたような刺激が女性器を貫いた。無慈悲に白い歯列が萎縮してしまった股間に近づき、硬く勃起したままの艶治な肉芽を噛んでくる――カプッ。
「う――ッ、うわああああああああああああああああっっっ!!?」
 無我夢中でゾフィアを蹴り飛ばした。鏡の墓標らをボウリングピンの如く砕きつつ遠くに放り飛ばされる菫の淑女。すかさず滑空に移って追い縋った邪鏡精たちが、瞬く内に彼女を剣山に変える。しかし、そこから響いてきた声音に敗北の気配は微塵も無かった。
「ゥ――フ――フ――、……反抗するのはいいけれどー、その分だけ、お前の穴という穴に倍返しよぉ? 覚悟は出来ているのかしら、マイ・ガール!!」
(駄目だ……この状態じゃぁ勝てない……!)
 萎縮した太腿が内側に向かって縮み上がり、陰阜の双山脈を左右から潰して擦り合わせた。逆二等辺三角形の隙間が空いてしまうのがもどかしい。まだ初な菊座には熱湯の悦。
「ハァ……ハァア゛ァァァァ……ッッ!! 勝負は預けるよ……その首洗って待っていて……ッッ!! 次に会ったら地獄のメドレーを聴かせてやる……ッッッ!!」
 口元や顎にこびりつく潮噴き液を拭い、膣から羽根ペンの束を引っこ抜いて、鏡床に叩きつけた。官能的な屈辱に打ち震えながら魔少女は、そして身を翻す。
「何処に逃げようというの、ランセリィ! お前は私の物なのに、何処に逃げようというのかしら?! アッハ、アッハハハハハハハハハハハハハハァァァァァァッッッ!!!」
 その背中を、魔物喰らいの哄笑が何時までも何時までも追い続けていた。


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